もやもやレビュー

『紙の月』を観て、賢くもなく美人でもない自分を愛おしく思った。

紙の月 DVD スタンダード・エディション
『紙の月 DVD スタンダード・エディション』
宮沢りえ,池松壮亮,大島優子,田辺誠一,吉田大八
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 どんよりとした天気の日。気分の軽くなる映画を観たいと思いつつも、気になっていた『紙の月』を観て、重い気分に拍車がかかりました。
 
 わかば銀行に勤める梅澤梨花(宮沢りえ)は、パートから営業の契約社員に昇格。会社員の夫(田辺誠一)と二人暮らしでしたが、夫は梨花にまるで興味なし。夫の昇進祝いに梨花がお揃いの腕時計をプレゼントしたのに、そんなことはすっかり忘れて出張土産に高級腕時計を買ってくる始末...。

 そんな折、梨花は顧客の孫である光太(池松壮亮)と出会い、まだ大学生の光太との情事が始まります。ホテルでの密会を重ね、どっぷりハマっていきます。光太の学費(200万)を工面してあげたり、高級なマンションに洋服やアクセにと次々と買いこみ、歯止めが利かなくなっていました。

そしてついには定期預金証書を偽造して顧客からお金を預かり、そのお金を着服していく......を繰り返し、自分でもいくら使ったか把握できないほどになっていたのです...。

 そもそもこんな事態を招いたのも、梨花の美貌と聡明さがあったからで。きれいじゃなければ自分よりうんと年下の大学生との恋愛も始まらなかっただろうし、頭が良くなければ偽造や着服しようという知恵や手段も思いつかなったはず。そう考えると、整った容姿や明晰な頭脳なんてない方がいいに決まってる。そう強く思った次第です。
 ちなみに、映画のモデルになった事件の犯人も、刑務所にファンレターが届くほどの美人だったようです。

(文/森山梓)

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