もやもやレビュー

マンネリ打破の方策は、『007』シリーズに学べ!

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人も企業もブランドも、長く生きていればマンネリを避けては通れません。もちろん007も然り。それを避けるために、約50年で6人のジェームズ・ボンドが生み出された『007』。そこにはマンネリを克服するためのテクニックが詰まっていました。

時々、アホになれ!
全6作が製作された、初代ショーン・コネリーのジェームズ・ボンド。胸毛フェロモンで007の人気とブランドを浸透させた一番の功労者ですが、4本目の『007/サンダーボール作戦』あたりから、マンネリの波が押し寄せてきました。
そして誕生した5本目『007は二度死ぬ』は圧倒的なアホ映画! トンデモ日本を舞台に、ボンドが丹波哲郎と一緒にお風呂に浸かったり、似合わなすぎて衝撃の漁師コスや、ほぼ全身タイツでしかない忍者コスを披露するなど、前作まででも時折匂っていた「007ってもしかしてアホ映画?」を確信に導いてくれてエキサイト。再び次作が楽しみになります。『007は二度死ぬ』は、マンネリには笑いのスパイスがよく効くことを教えてくれる作品です。

潔く断捨離!
3代目ボンドのロジャー・ムーアは、シリーズ最多の7回もボンドを演じ、『007』の黄金期を支えました。チャラさとアホさが加速し、様々なお約束も定着させる一方、アホ方向に振り切れた悪役ジョーズの登場などでもウキウキさせてくれます。そんなムーアボンドが中期に決行したのが、ボンドの宿敵だった犯罪組織スペクターのボス、ブロフェルドのあっけない粛正です。
シリーズ12作目(ムーア5作目)『007 ユア・アイズ・オンリー』の冒頭、ブロフェルドはボンドによって煙突の中に投げ捨てられます。この人こんなに軽やかに殺されていいのだろうかと、こちらが不安になるほどあっさりとした断捨離。マンネリ打破には、一番大事というほどじゃないけどちょっと大事なものを捨ててみるのも効果的です。

キャラチェンジする時は見た目からわかりやすく!
ムーア終盤の凶悪なマンネリ感のあと、地味だけど心地よい正統派の4代目ティモシー・ダルトン、ユーモアとカッコよさのバランス感に優れた5代目ピアース・ブロスナンと段階的な変化を経て、2000年代中盤、クール方向に猛烈に偏ったボンドが誕生します。6代目にして現役のダニエル・クレイグのボンドは、スパイというよりスタイリッシュな殺し屋。シリーズで受け継がれてきた様々なお約束を覆しますが、そんな中でも一番大きな変化と言えるのが、シリーズで初めて金髪になったことです。『007』は変わる! その意気込みがストレートに伝わってきます。
キャラチェンジをすると決めたら、中身だけでなく見た目にもわかりやすく! これ、やっぱり大事なことなのです。困ったら金髪にしよう!

(文/鬱川クリスティーン)

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