なぜ「頭ポンポン」は逆効果? 女性に好まれる男性が実践している"さりげない気配り"とは
- 『モテたいと思っている男ってなんであんなに気持ち悪いんだろう~本当にうまい女性のほめ方~』
- 大島 薫
- 竹書房
- 1,600円(税込)
- >> Amazon.co.jp
- >> HMV&BOOKS
「モテたい」と願う人は少なくない。好きな人に振り向いてほしい、異性から注目されたい――そんな気持ちはごく自然なものだろう。しかし、その"モテたい欲"が前面に出すぎると、途端に相手から敬遠されてしまう。
大島 薫氏の著書『モテたいと思っている男ってなんであんなに気持ち悪いんだろう~本当にうまい女性のほめ方~』(竹書房)では、そんな"ズレ"の正体を鋭く突き、恋愛の場面でありがちな空回りをユーモラスに描いている。
著者は男性として生まれながら、女性の見た目で活動してきた人物。その経験から「男性としての視点」と「女性として見られる立場」の両方を持ち合わせていることが、本書の大きな特徴だ。一般的な恋愛指南書とは異なり、男女双方の立場を行き来できるからこその説得力がある。
本書では、男女のコミュニケーションに潜む"気持ち悪さ"を、82の短いエッセイで言語化。なかでも印象的なのが、女性に対する褒め方の考察だ。
現代では、女性を褒めること自体が難しい。何気ない言葉がセクハラと受け取られる可能性もあり、褒めたい気持ちがあっても言葉選びに慎重にならざるを得ない。では、どう褒めればいいのか。著者はこう提案する。
「女性を褒めるときはセンスを褒める」(本書より)
顔やスタイルといった生まれ持ったものではなく、服や持ち物など自分で選び取ったものに注目することで、相手の感性に敬意を払うことができる。たとえば「そのバッグ素敵ですね」といった言葉なら、セクハラにならず、相手も素直に喜んでくれる。褒める行為が、相手との距離を縮めるコミュニケーションになるのだ。
こうした細やかな視点は、恋愛にとどまらず、日常の人間関係にも通じる。誰かと心地よく過ごすために必要なのは、見た目や肩書ではなく、相手の選択や感性を尊重する姿勢だ。
さらに著者は、美人には「きれいだね」と言うよりも「面白いね」と伝えるほうが効果的だと説く。外見を褒められることに慣れている相手には、会話や行動のユニークさに注目するほうが印象に残るという。
「100人が100人とも思う感想をつぶやいているようでは、その他大勢の男たちと差を付けられない」(本書より)
とはいえ、こうした観察力や言葉選びも、土台が整っていなければ意味をなさない。本書は、巷で語られる"モテるためのテクニック"にも容赦なく切り込んでいる。
「モテテク特集みたいなのを信じた好きでもない男からの『頭ポンポン』は殺意しか湧かない」(本書より)
語り口は辛辣でありながらも、どこかユーモラスで、頷く女性はきっと少なくない。壁ドンや軽いボディタッチなど、関係性を無視した"演出"は不快感を招くだけだ。恋愛において大切なのはテクニック以前に、清潔さや距離感、相手の話を聞く姿勢といった基本、そして何より信頼関係が欠かせない。
著者は男女両方と恋愛ができるバイセクシャルであり、性的な経験も男女ともにある。にもかかわらず、実際に付き合ったのは女性のみ。その理由は「男がつまらないから」だという。
「もっと男性は、自分がつまらないことを認識したほうがいい」(本書より)
では、何が「つまらない」のか。たとえば、デート中に自分だけサクサク歩いてしまう。何時間もかけて選んだ服に何のリアクションもしない。割り勘を主張する一方で、ホテルには誘う――。こうした振る舞いに共通するのは、"気遣いのなさ"だ。
著者は、女性が何か話題を出したときに「じゃあ一緒に行こうよ」と自然に返せるかどうかが、モテる人とそうでない人の差だと語る。男性の中には「否定することが意見を言うこと」だと捉えている人がいる一方で、多くの女性は「同意の言葉を表現し合っている」と分析。つまり大切なのは、特別なテクニックではなく、相手を尊重した受け答えができるかどうかだ。
また、すでに好意を持ち合っている関係なら、「楽しい?」「幸せ?」と確認するより、「俺めっちゃ楽しい」と自分の気持ちを伝えるほうが場を明るくする。たとえ女性がそこまで乗り気でなくても、悪い気はしないだろう。
さらに、失敗をしたときには取り繕わず、素直に恥じることも大切だ。女性は"完ぺきを演じる男性"よりも、素直で人間らしい男性にこそ親しみを感じる。
「イケメンになれなくても空気が読める男には誰だってなれる」(本書より)
この一言こそが、本書のメッセージを端的に表している。恋愛に限らず、人との距離感に悩んだことのある人なら、きっと心に響くだろう。本書は男性に対するあたりがやや強いが、もちろんこれは男女逆でも当てはまる人がいるはずだ。本書を通して、人間関係がうまくいかない理由に、ふと気づく瞬間があるかもしれない。