言葉はゴールではなく、ひとつの手段。『イエスマン"YES"は人生のパスワード』
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自分を変えるアドバイスとしてよく言われるのが、「口癖を変えてみる」というもの。脳は自分が口にした言葉に無意識に影響を受けていて、プラスの言葉を常に発している人はポジティブな行動を選ぶようになる、というものです。本作の主人公カール(ジム・キャリー)は、この法則にまんまとひっかかり、人生を変えちまった男です。
カールの絶望的なネガティブさから映画はスタートします。友人の電話には、基本出ない。出たとしても、マシンガンのごとく言い訳をならべて遊びを断り、親友の結婚式もすっぽかす。上司からの誘いにも、日時を聞く前に「あ〜残念、先約がありまして」。鉄壁のディフェンスです。完璧なコメディアン顔のくせに、オーラは悲壮感におおわれています。
そんな生きかたを友人に罵倒され、わびしく死んでいくイメージにふるえたカールは、たまたま誘われたセミナーに参加することに。これが転機となります。押しの強い主催者に不幸な現状を言いあてられ、決断のすべてに「イエス」と答える誓約をたてたカール。ホームレスの人にあり金を全部あげてしまったり、業務の融資依頼にはすべてゴーサインを出したりと、自暴自棄のようなイエス運動でしたが、しだいにプラスの力が、カールの日常を変えはじめます。
「イエス!」を連発することで、さまざまな幸運を得たカール。ですが、大切なのは外の結果ではなく、カールの内側におきた変化だと思います。言葉は変わるきっかけ、手段のひとつにすぎません。「イエス」という言葉を放つことで、外に踏みださないメンタルをはがしたことに、意味を感じます。心のマイナスを0に、または0を1にしたい時。すべてにマルをつける言葉は、きっとプラスの影響を呼びこむはずです。
(文/伊藤匠)