もやもやレビュー

【80年代特集!】ホントにデキる続編は、明日に進むための気構えを教えてくれる。『マッドマックス2』『死霊のはらわた2』

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お金はないけど、ノリと勢いとガッツと愛でつくったものがスマッシュヒット。じゃあ予算10倍出すから(それでも少ない)次も同じシリーズでもっとすごいの頼むよ(鼻息)。
なんてなことになったら、誰だってけっこうプレッシャー感じます。増えた予算に惑わされたり、リアルに「1」で燃え尽きてたりで、だからこそ続編は失敗することも多いし、2代目が会社潰しちゃうことも多いです(あまり関係ない)。

そんな難しい続編界にあって、その存在感とか吹っ切れ感とか、いろいろ含めてレジェンドなのが『マッドマックス2』と『死霊のはらわた2』です。
いずれも前作が、自主制作に毛が生えたぐらいの超低予算にもかかわらずヒット。それを受け、前作比10倍の予算(とはいっても低予算)で作られた続編です。

まずは『マッドマックス2』。
超低予算のほとんどを車両の改造に費やし、死人が出たなんて噂されるほど激烈なカーアクションで人気を得た前作『マッドマックス』(1979)。制作費と興行成績の差が最も大きい映画として、長らくギネスに載っていたほどで、ジョージ・ミラー監督と主演のメル・ギブソンの大出世作に。が、近未来という設定なのに、どう見てもただのオーストラリアの片田舎にしか見えないロケーションなど、低予算ゆえの詰めの甘さも目立っておりました。

で、その2年後に作られた「2」は、前作の直後に勃発した世界大戦で荒廃した地球......という、アナザーワールドを構築。キャストもメル・ギブソン以外全替えで、増えた予算はまたしても車両改造に注ぎ込み、ロケーションにはまたもや金をかけず荒野に移行。そして敵の暴走族にはモヒカンや鉄仮面など、不良の象徴としてのパンクでロックで時々メタルな雰囲気を導入。そうして出来上がった世界観は、『北斗の拳』の元ネタとして知られ、その他多くの作品に絶大な影響を与えています。そう、ヒットした「1」を惜しげもなくほぼ丸無視することによって成し得た続編なのです。

一方の『死霊のはらわた2』は、予算10倍のはずなのに、まさかの前作とまったく同じロケーション(一応、小道具が少しずつ立派になってる)! キャストに関しては『マッドマックス』同様、主演のブルース・キャンベルのみ生かしで、残りは全取っ替え。しかも予算10倍のはずなのに(しつこい)、ブルース・キャンベルの一人芝居(自分の手と格闘するパントマイム)が長めに挿入されるという暴挙まで。

......と、一見、ヒットした「1」に完全に乗っかっているようですが、「1」ではただのホラー映画の主人公に過ぎなかったアッシュ(ブルース・キャンベル)にヒーローの可能性を与え、こちらもアナザーワールドを構築して見せたのです。

そんな2作品に共通しているのが、己が深い愛を注いで作り上げた「1」を、続編によって完全に食ってしまっていることです。とっても思い入れが深いであろう「1」のヒットに、踊らされてない「2」。もとい、続編という言葉に取り憑かれてない「2」。いやむしろ、「2」って言ってるけど別に「2」でもない「2」。つまり、己に打ち勝っている「2」なのです! しつこくてすません!

自我や過去の栄光など、昨日までの「己」に取り憑かれている我々が、自分自身に打ち勝って次へ進むために。
偉大なる続編、『マッドマックス2』と『死霊のはらわた2』は、とりあえず大事なモノ(2作品にとっては"顔"である、メル・ギブソンとブルース・キャンベル)以外全部捨ててみようってことを、教えてくれました。つまりそうだ、空っぽの自分だけ、明日に持っていけばいいんです、きっと。
(文/鬱川クリスティーン)

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