もやもやレビュー

『天才マックスの世界』を観て、失恋エネルギーの活かし方を学ぶ。

天才マックスの世界 [DVD]
『天才マックスの世界 [DVD]』
ジェイソン・シュワルツマン,ビル・マーレイ,ウェス・アンダーソン,ウェス・アンダーソン,オーウェン・ウイルソン,ジェイソン・シュワルツマン
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『グランド・ブダペスト・ホテル』が公開中のウェス・アンダーソン監督の初期作。内容が想像出来ないタイトルですが、不器用な男子が奮闘する恋の話です。

 名門ラッシュモア高校に通うマックス(ジェイソン・シュワルツマン)は、一風変わった15歳の少年。学校で所属しているクラブの数は、なんと19個!! 高校年鑑の編集長、カリグラフィー・クラブ部長、天文部創設者、フェンシング部部長...狂気的な好奇心です。そんな人並みはずれた行動力を持ちながら、なぜか学校の成績は落第しまくりの超低空飛行。そんな風変わりな学校生活を謳歌していたマックスが一目惚れしたのが、初等部のクロス先生(オリヴィア・ウィリアムズ)でした。マックスにとっては初めての恋であったこともあり、持ち前のエネルギーをフル回転させ、先生への猛烈なアタックをスタートします。

 冒頭で不器用と書いた通り、マックスのクロス先生へのアプローチは、とことんズレています。先生の大学時代の専攻がラテンアメリカ経済だったと知ると、毛嫌いしていたラテン語の授業を復活させるべく署名運動に奮闘します。熱帯魚が好きだと知ると、工場経営者であるブルーム(ビル・マーレイ)から資金を調達し、学校の野球場に勝手に水族館を建設しようとしたり、とにかく行動がめちゃくちゃ極端。それで熱意が届けばいいのですが、年上の先生からは友達扱いされるばかりで進展はなし。そんな折、こともあろうにクロス先生とブルームが付き合い始めるという悲劇がマックスを襲います。

 初恋に惨敗し、なにもかも上手くいかなくなってしまったマックス。ですが物語のラスト、敗れた思いと傷を、マックスは「演劇」という形で昇華させます。クロス先生、ブルーム、それまでに登場した全員の前でマックスが放ったある台詞には、壁を乗り越えた少年の誇りを感じました。恋愛の辛さは「表現するエネルギー」に変えられる! 不器用な少年の勇姿に、そんなことを学ばせてもらいました。

(文/伊藤匠)

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