もやもやレビュー

みんなDQNでいいじゃないか!! 『恋の渦』

恋の渦 [DVD]
『恋の渦 [DVD]』
新倉健太,若井尚子,柴田千紘,後藤ユウミ,松澤匠,上田祐揮,澤村大輔,圓谷健太,國武綾,松下貞治,大根仁
ポニーキャニオン
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 ドン・キホーテで買い揃えたような家具が並ぶ、ある一室。男女9人の部屋コンから、物語は始まります。その日の目的は、男子メンバーの1人である非モテ男のオサムに、女子を紹介すること。女子メンバーの「かわいいよー」「AKBで言ったら麻里子様似!」というコメントに好奇をそそられる男たちでしたが、そこに現れたのは、恐ろしく何とも言えない感じの女子、ユウコでした。微妙な空気が流れるなかで部屋コンはお開きに。ですがその後、各メンバーは己の欲望の赴くまま、嘘と傲慢が染み出した恋愛模様をくり広げていくことになります。

 本作の武器は、その究極的なゲスさにあります。彼女には女々しい小言ばかり言うのに、男の前では不遜な態度を押し出すDQN。彼女がバイトに行った後に、部屋コンで知り合った女子とセックスしまくるDQN。昨今人気の、オシャレ感の強いシェアハウスドラマとは一線を画す「男と女の汚さ」が、満遍なく映されていきます。

 本作の魅力はもう一点あります。それは、「こいつらほんとバカだなぁ」と思っていた観客側が、最後には「自分たちも同じじゃん...」と思わずにはいられない、共感するしかない愚かさが描かれている点です。

 観察者にまわっている時は、誰だって利口になります。だけど、実際その場にいる時には、誰だって馬鹿なことをしまくっています。恋愛に限らず、飲み屋で外聞もなく騒ぎちらす大学生やサラリーマン、スタバやファミレスで喜々として愚痴と悪口を吐き出している女子高生や奥様方。断言します。みんなDQNです。だけど多分、それでいいんです。恋をする傍らで、夜勤のバイトに向かったり、携帯料金を払ったり、本作に登場するキャラはみんな頑張って日常を生きています。自分たちだって同じこと。時々クソみたいなキャラになる時もあるけど、明日も学校や会社に行くし、ご飯も作る。普通さも汚さも持っている方が、なんだか愛らしいし人間っぽいです。だから言います。DQNだって、いいじゃないか!

(文/伊藤匠)

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