先輩へのリスペクトって、大事だよね!『アーティスト』
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ハリウッド映画がサイレントからトーキーへと移り変わる時代を、全編に渡って1920年代のサイレント映画を再現したモノクロ映像で描いた映画『アーティスト』。2011年度のアカデミー賞で作品賞ほか5部門を受賞するなど、大絶賛を受けた本作。サイレント時代を牽引したスター俳優ジョージ・ヴァレンティンの没落と、トーキー時代の到来とともに躍進するニュー・スター女優ペピー・ミラー。対照的なふたりの役者の境遇を、映画界の移り変わりと重ね合わせて描く粋なストーリーです。
ペピーが駆け出しの頃に偶然出会い、なんとなく心惹かれ合うふたり。特に付き合ったりすることはなかったけれど、「女優を目指すなら目立った特徴がないと」と、唇の上にアイライナーでつけぼくろを描いてくれたジョージのアドバイスを、ペピーはずっと実践し続けます。
やがてスターへの道を駆け上がっていくペピー。一方で、時代の流れに逆らっているうちに落ちぶれてしまうジョージ。ある日、レストランで取材を受けていたペピーは「老兵は去り、後進に道を譲るべき」という天狗発言をします。成功して有頂天になり、ついつい口をついて出てしまった言葉。しかし、偶然にも後ろの席にはジョージの姿が。彼は「譲ったよ」と捨て台詞を残してその場を去っていきます。
『アーティスト』の舞台となった時代よりも、もっとずっと物事がものすごいスピードで移り変わっている現代。新しいものを否定して古いものにしがみついてる人を見ると、ついつい「老害」なんて思ってしまったりする反面、実は自分も老害化していることに気づいてうんざりすることもあったりします。否定し罵り合うよりも、お互いのいいところを取り入れられれば良し。ジョージのプライドと、ペピーのリスペクトの心は、スピード感溢れる時代を生きるうえでの大切なことに、気づかせてくれます。
(文/鬱川クリスティーン)