もやもやレビュー

『犬猫』が教えてくれる、憎めないモテ女になる秘訣。

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 モヤモヤさまぁーずとか旅猿とか正直さんぽとかお好きな人には結構ハマるんじゃないかと思われる本作です。なぜなら筆者がそうだからです。

 『人のセックスを笑うな』の井口奈己監督が、ぴあフィルムフェスティバルで企画賞を受賞したデビュー作『犬猫』(8ミリ版)を、自身の手で35ミリ版にリメイク(2004年)。トリノ国際映画祭でトリプル受賞を果たし、日本映画監督協会新人賞を女性として初めて受賞しました。

 幼稚園から一緒のヨーコ(榎本加奈子)とスズ(藤田陽子)は、いつも同じ男の子を好きになってしまうことからあまり仲が良くありません。そんな2人が、共通の友人・アベチャン(小池栄子)の家で望まざる同居生活を送ることに。「21世紀は中国でしょ」という言葉を残し、写真を学びに中国に留学したアベチャン。その留守を預かったのがヨーコでした。一方のスズは、ヨーコの元カレでもある同棲中の彼氏・古田(西島秀俊)との暮らしに嫌気がさして、アベチャンの家でお世話になろうとやってきたのです。
 
 ぶっきらぼうでしっかり者のヨーコに、天真爛漫なスズ。正反対の2人ですが、特にスズには、男の人にモテそうだなぁと思われる要素がいっぱいです。

例えば、古田とのやり取り。2人分作ったカレーを先にひとりで食べ始め、向かいで雑誌を読みながらご飯を待つ古田のスプーンは(たぶんわざと)用意しません。で、古田から「スプーン」と子どものように甘えた声でねだられると、いかにもおいしそうに食べながら「とってきてほしいの?」ともてあそぶ。なんなんだこのプレイは!
 
 また、ヨーコが想いを寄せる三鷹くん(忍成修吾)には、初対面にも関わらず、ヨーコと男性の趣味が一緒だという話のくだりから、「あのね、三鷹くんも危ない」と思わせぶりなことを普通に言います。三鷹くんのまんざらでもなさそうな反応をみて機嫌を損ねたヨーコのために、あとでケーキをこっそり作ってあげるフォローもしっかり。

 しかも、ヨーコへの気遣いは他にもあります。彼女の好きな紅茶の飲み方を把握していたり、酔っぱらって床に寝てしまったヨーコをまるで赤ちゃんをあやすように優しく布団をかけてあげたり。これはもう、男とられたって憎めない! ズルいです!

ツンデレであり気遣いもすごい。素なのか計算なのかわかりませんが、きっとこういう女性が男性にモテるんだと思います。というモテの秘訣も学べますが、まったりと緩やかに進む物語は、人との関わり合いから生まれる様々な感情を味わえて、不思議と満たされる作品です。

(文/森山梓)

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