『ヨコハマメリー』を観て、真実はひとつじゃないと思った。
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今回はちょっと毛色を変えて、ドキュメンタリー映画を紹介したいと思います。その映画とは、『ヨコハマメリー』。
白塗りに、白いドレスに身を包み、横浜では名物的存在になっていたホームレスの娼婦・メリーさん。そのメリーさん、突然横浜の街から姿を消します。メリーさんはどうなってしまったのか。どこへいってしまったのか。それを追ったのがこの映画です。
メリーさんの周辺の人たちの取材から、メリーさんの実像が浮き彫りになっていくのですが、正直、白塗りの顔は、最初見た時、ぎょっとなります。異形と言ってもいいかもしれません。普通の人なら、まず話しかけないでしょう。しかし、メリーさんと信頼関係を結んでいた人は、じつはたくさんいました。その人たちの証言によって、取材班はついにメリーさんがいるだろう場所をつきとめます。そして待っていた結末は......。
人はメリーさんのことを、かわいそうと思うかもしれません。でもこの映画が描き出しているメリーさんは、本当に人生をエンジョイしている。例え、心の底に深い悲しみを抱いていたとしても。
この映画は、私たちの先入観や偏見を一度リセットさせてくれます。自分が思っていることだけが真実ではない、それがこの映画の教訓のひとつとも言えるのではないでしょうか。
(文/神田桂一)