『の・ようなもの』を観て、古き良き日本を感慨深く眺めた。
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物心ついたときから不況、それまでの日本を形作ってきた基盤が次々に崩壊......そんな日本の姿を観てきた若い人たちに観てもらいたい映画を今回は紹介します。
『の・ようなもの』は、81年、高度経済成長、所得倍増計画を終え、さあバブルに突入するぞという狭間に撮られた映画です。落語業界を描いたものですが、主役は落語家の内弟子たち。師匠の家に住み込みながら修行の日々を送る、落語家のたまごたちの日常をポップに描いた青春群像劇です。ちなみに、2011年に惜しまれつつ亡くなった、『家族ゲーム』『間宮兄弟』などで知られる森田芳光監督の劇場デビュー作でもあります。
そして、ここに描かれているのは、古きよき日本の姿......。落語業界の徒弟制度を見ていると、終身雇用が守られていた普通の企業ってたぶんこんな感じだったんだろうなあと思わされます。また、落語家のたまごたちは将来に不安を感じつつも、それ以上の夢と希望を持って、日々修行に励んでいます。なんというんでしょうか、同じ釜の飯感が凄くいいんですよ。この、同じ目標を持ったものが集まって切磋琢磨する状況、それにとても憧れるんです。
ここに描かれていたような良き時代はもう終わったのかもしれません。でも、日本にもこんな時代があったんだと確認することで、見えてくるものもあると思うんです。僕たちの時代には僕たちの時代にあったやりかたがある。そんなことを思ったりもする映画でした。
(文/神田桂一)