もやもやレビュー

『ゾディアック』を観て、継続するための秘訣を見つけた。

ゾディアック ディレクターズカット [Blu-ray]
『ゾディアック ディレクターズカット [Blu-ray]』
ジェイク・ギレンホール,マーク・ラファロ,ロバート・ダウニー・Jr.,アンソニー・エドワーズ,デビッド・フィンチャー
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 何でもすぐに飽きてしまうのが悩みです。飽き性な人生を振り返り、ちょっと悶々としていた時に『ゾディアック』に出会いました。

 1968年から1974年にアメリカで実際に起きた、未解決の連続殺人事件を描いた映画『ゾディアック』。暗号化された犯行声明文や、被害者の血の付いたシャツの切れ端を封入した挑発的な手紙を、警察や新聞社に送りつけてくる、ゾディアックと名乗る殺人鬼。派手な行動をしているにもかかわらず、何年経っても一向に捕まえることができません。そんな謎の犯人を追う過程で、いろんな男たちの人生が狂っていく・・・というお話です。

 新聞社に務める風刺漫画家、ロバート・グレイスミス(ジェイク・ギレンホール)がこの映画の主人公。ちなみにこの人は実在の人物で、1986年に事件のことをまとめた著書『Zodiac』がベストセラーとなっています。ゾディアックが初めて送りつけて来た暗号文に興味を持ち、以来ずーっとゾディアックのことが気になりまくっていたグレイスミス。再婚して3人の子どもがいますが、取り憑かれたかのように事件を夢中で追ううちに、家族は家を出てしまいます。

 で、そんなグレイスミスが発した言葉の中に、忘れられないひと言があります。家族のことも構わず事件に夢中になる彼に、キレて出て行った奥さんが「なぜあなたがやらなければならないの?」と尋ねるシーン。確かに、刑事でも記者でもなく、漫画家である彼が家庭を崩壊させるほどに事件に執着する必要があるのか、当然の疑問です。それに対して、グレイスミスはたったひと言「誰もやらないからだ」と答えるんです。

 例えばスパイダーマンやスーパーマン、バットマン。彼らの人を救い続ける使命感っていったい何なんだろうと感じていました。その答えはきっと、グレイスミスと同じようにとてもシンプルで、「誰もやらないから」なのかもしれません。純粋な使命感というものが生まれる場所が、わかった気がしました。好きだから続けているものは、自分が好きじゃなくなったら終わりになるけど、誰もやらないから続けているものは誰かがやらない限り終わりにならない。だからスパイダーマンにも終わりはない。そうか。何かをやり続ける秘訣って、もしかして後者の方にあるのかも知れない。

(文/鬱川クリスティーン)

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