もやもやレビュー

ビビッドに瞬間瞬間を生きる人たちに力をもらった。『ソウル・キッチン』

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 皆さまごきげんよう。初めて入った近所のお惣菜屋さんで注文のシステムが分からず「お弁当にできるんですか?」と店のおばちゃんに尋ねたところ「うちはねぇ、お弁当って言ってもチェーン店とは違う訳!」とよもや怒りの第一声。そんな今日この頃です。

 さて『ソウル・キッチン』はハンブルグのレストランが舞台。オーナー兼シェフの主人公は恋人が海外赴任してしまい、しょげているところへ仕事で食洗機を持ちあげようとしてギックリ腰に。加えて税務署からは税の督促、保健所からは大規模なリフォームを迫られ、〈人間関係(含む恋愛)〉〈健康〉〈お金〉すなわち人生の「3大お悩み」が同時に押し寄せます。

 しかし彼はイライラしつつも深刻になりすぎず、強さを失いません。お金の問題に悩まされている割に、店の敷地には老人をタダで居候させるココロの余裕がある。税務署や保健所の人々も皆人間くさく、キッチリ詰め過ぎないゆとりを感じさせます。タフだけど目の前の困っている人に手を差し伸べる自然な優しさがあります。

 同じ瞬間は二度となくて、毎秒毎秒、世界はその姿を変えています。だけどニッポン(特にトーキョー)に生きる私たちはあまりに忙しく、また疲れていて、その違いを味わうことをしていません。一つひとつの違う状況に相応しい対応を考えるにはあまりにも物事が複雑になりすぎていて、思考をストップして、流れるシステムにすべてを載せていくだけ。私たち自身すらシステムに取り込まれていて出口が見えなくなっているのですから。 

 そうした風潮を打ち壊すパワフルな人々もどんどん出てきていますが、まだまだ見えない縛りでがんじがらめになっている私たちに、ソウル・キッチンに集う人々は色濃く鮮烈な瞬間瞬間を生きる、力強い姿を見せてくれます。

(文/小野好美)

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