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嫌いなアイツに感謝の気持ちが芽生えた。『かいじゅうたちのいるところ』

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 結局、お花見には呼ばれませんでした。だのに、暴風雨の週末に限って出掛けなければならない用事がありました。そんな人生です。

 2010年、スパイク・ジョーンズ監督によって実写映画化された『かいじゅうたちのいるところ』。原作は、1963年に出版されたモーリス・センダックの絵本です。
 8歳の少年マックスは、ある夜、母親に怒られて家を飛び出し、偶然見つけた船でかいじゅうたちの棲む島に辿り着きます。巨大なかいじゅうたちに食べられそうになったマックスは、咄嗟に「自分は王様だ」と嘘をつきます。するとそれを信じたかいじゅうたちは、王様マックスの指示のもと、自分たちだけの夢の砦づくりを開始します!

 島に存在する7匹のかいじゅうたちは、あらゆる性格の持ち主です。すぐ人に取り入ろうとするジュディス、誰にも相手にされない内気なアレクサンダー、知的でクールなKW。なかでも癇癪持ちのキャロルは、その性格が災いし、やや孤立しています。現実世界で行き場のなかったマックスは、「自分の味方は自分だけ」というキャロルの言葉に共鳴、親交を深めていきます。

 ところが、砦の完成間近といったところで事件勃発。ある出来事から、自分の思い通りにならないマックスに、キャロルが癇癪を起こして大暴れ。せっかく作った砦もめちゃくちゃにしてしまいます。困惑したマックスは「もう手に負えない!」と叫びますが、しかしそこで気付きます。まったく同じ言葉を、自分も母親に言われて家を飛び出してきたと。

 つまり「かいじゅうの島」という幻想的な世界は、実はマックスの内面世界だったんです。あらゆる性格のかいじゅうたちは、マックスの写し鏡。現実世界でもワガママで「王様」だったマックスは、そんなかいじゅうたちと対峙することで自己を知り、他者との関わり方をほんの少しだけ、学んで帰ります。

 大人になっても、どうしても好きになれない人っているものです。でも、それは同族嫌悪の場合もあるのかもしれません。マックスとキャロルの関係のように。だから身の回りにいる嫌いな人からは、むしろ学びを得ればいいんだと思いました。自分の写し鏡として、ときに反面教師として。

 そうすれば、大嫌いなアイツのことを好きにはならないまでも、「ちょっとくらいは感謝してやってもいいかな」程度には思えるかもしれません。っていうスタンスだから私には友だちがいないのだということにも、早速気付くことができました。周囲の人たちの見方が変わる、そして自分のことをちょっとだけ知ることができる、そんな映画です。

(文/ペンしる子)

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