友達だと思ってたら実は友達じゃなかった。『ドッグヴィル』
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- ニコール・キッドマン,ポール・ベタニー,クロエ・セヴィニー,ラース・フォン・トリアー
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友達とのつながりもある意味ひとつの共同体です。助けあったりすることもあれば、同時にお互いを監視するシステムにもなるわけで・・・。そんな共同体の負の部分を描ききったのが、デンマークの鬼才・ラース・フォン・トリアー監督の『ドッグヴィル』です。
まずこの映画、なんと演劇的な舞台セットで行われています。しかもセットの建物には壁がなく、扉もありません。道路も白線が引かれていて、通りの名前を記した文字があるだけ。それはその街に対して、ある程度想像の余地を残しているとも言えると思いますし、壁がないのが、無関心と監視を同時に示すメタファーともとれなくもないです。とにかく見た目が斬新すぎてまず最初に度肝を抜かれます。
役者たちは壁や扉があるていで、演技を進めていきます。マフィアに追われ、ドッグヴィルに逃げ込んできたグレース(ニコール・キッドマン)は街の人々に最初は歓迎的に迎えられます。何人かの友達もでき、彼女は喜んで涙しますが、いい状態はそう長くは続きません。マフィアが依然彼女のことを探していると不安になった住民たちは、徐々に牙を向き始めます。彼女の仕事量を二倍にしたり、男性は彼女を性的な対象として見るようになり、レイプ、そしてそのことを知っていても誰も問題にせず、放置。そして逃亡に失敗した彼女にとうとう首輪をつけて行動の自由を剥奪します。人間が集まったとき、どういう行動をとるか。弱者にたいしての優越感、集団心理の凶暴性などを監督は赤裸々に暴いていきます。
最後、大どんでん返しが待っているのですが、それは見てのお楽しみ。友達と思っていた人たちが急に牙をむく恐怖、その可能性も見据えつつ、人間関係は大事にしていきたいですね。
(文/神田桂一)