もやもやレビュー

『グッドナイト&グッドラック』を観て、喫煙者に優しくしようと思った。

グッドナイト&グッドラック 通常版 [DVD]
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 喫煙者の肩身が狭い世の中になりました。街中から喫煙所の数は減り続け、ぶらりと入ったお店は「分煙」から「全面禁煙」に・・・日本は喫煙者に優しい国とは言えません。
 こんな風に書いていますが、私はタバコを吸いません。分煙、禁煙、大賛成、値段もどんどんインフレしてしまえ、と思っていたくらいです。そんな私に「タバコって、必要な物かも」と思わせたのが『グッドナイト&グッドラック』という映画です。

 まず簡単に内容を説明すると1950年代、ソ連との冷戦下にあったアメリカでは、マッカーシー上院議員により共産主義追放運動、いわゆる「赤狩り」が推し進められていました。思想の自由を侵し、無根拠な弾圧を犯すマッカーシー議員の行動に対し全面対抗の姿勢を打ち出したのが、アメリカのテレビ局CBSの報道局、そして番組のメインキャスターであったエドワード・E・マロー。「身内が共産党員であるらしい」という噂だけで空軍のマイロ・ラドゥロヴィッチ中尉が除隊勧告を受けたことをマローが番組内で批判したことにより、ジャーナリズム(マロー)と権力者(マッカッシー)の戦いは本格化します。

 約90分という無駄を削ぎ落とした内容の中で私が気になったのは、マローがどの場面にあっても絶対にタバコを手放さないこと。本番直前のカメラの前であろうと、酸素の代わりに吸ってるんじゃないかと思えるほどタバコを手放さず吸いまくります。
 一見無駄に見えるほどの喫煙の描写。ですがマローの報道精神を陰で支え、ついには「赤狩り」という恐怖の空気を吹き飛ばすに至らせたものこそ「タバコ」なんではないか、私はそう思いました。

 日々、色々な物に支えられて私は生きています。それは深夜のくだらないバラエティであったり、ラジオから流れてくる愉快な下ネタであったりします。
 多分、次元は違えどマローの「タバコ」もそういう種類のアイテムなんではないかと思います。無駄な物だけど、普段の自分を保たせてくれるもの。それが彼の精神を保ち、世間の空気、大きく言えば世界を変えるに至らせた物なんではないかと思うのです。(そういえば私も受験生時代、第一志望の大学の試験の「これで人生が変わってしまうんじゃないか」というプレッシャーを、毎日コンビニで買っては口にしたチョコ菓子に救われました)

 単なる無駄な嗜好品と言ってしまえばそれまでですが、「タバコ」にもちゃんと役割があるんです。狭い喫煙室でおじさんたちに吸われてるタバコが、もしかしたら日本を根底で支えているのかもしれません。優しく見守りましょう。

(文/伊藤匠)

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