『桐島、部活やめるってよ』を見て、コンビニの店員さんに感謝を示そうと思った
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「自分は他人に影響を与え、自分も影響を与えられているのかもしれない」。そんなことを再認識させてくれるの映画、『桐島、部活やめるってよ』。
「桐島」という男子生徒がバレー部を突然辞めたことで生まれる、他の生徒たちの感情・行動を、様々な生徒の視点を折り重ねながら描いていくこの映画。最大の特徴は「高校」という場所で生活する生徒達の、ランク付けの風潮(所謂スクールカースト)をエグい程に描き切っている点にあります。リアルタイム、もしくはつい最近まで「高校生」として生活していた人達にとっては、この映画に映し出される登場人物達の感情の機微を、とても他人事とは思えないはずです。(私も3年前までいた教室内のチョークの粉や体育後の制汗スプレー、男子と女子の色んな空気が入り混じった高校の情景を思い出さずにはいられませんでした)
そんな思いを起こさせると同時に、この映画は「自分の行動は必ず誰かに影響を与えている」という当たり前の事実を眼前に突き付けます。例えば、神木くん演じる映画部の涼也が、屋上で吹奏楽部の亜矢に撮影をするためにどいてくれるよう頼むシーン。わざわざ屋上で練習することで、学校の片隅で遊び半分にバスケをする宏樹の目に止まりたい亜矢。頑なにその場を動こうとしない亜矢にいらつく涼也。ここで提示されるのは、単にバスケをしているだけの宏樹の行動が、亜矢を介して涼也にまで影響を与えているということです。
このような現象は私たちの身の回りでも頻繁に起こりうることではないでしょうか。卑近な例で言えば、コンビニでお釣りを貰う時の店員さんへの「ありがとう」。そんな小さな感謝の言葉で店員のお兄ちゃんの気分が良くなり、そのお兄ちゃんが次のお客さんに気持ち良い対応をして、そのお客さんも・・・そんなエンドレスに続く自分の行動の影響の「計り知れなさ」を、この映画は粛々と提示してくれているように思えるのです。最後に、こんな文ですが読んでくれた方「ありがとう」。本当に。
(文/伊藤匠)