『アニー・ホール』を観て、ウディ・アレンと友達になれるか考えてみた。

　人間ってめんどくさい生き物ですよねえ。それに輪をかけてめんどくさいのが自意識をこじらせちゃって友達もいないような人。そう、君や僕のことです。そんな人はとりあえず観てください。『アニー・ホール』。言わずと知れたウディ・アレンの出世作です。

　本人も出演していることから、しばしば主人公とウディ・アレンが混同されて広く自伝的映画と信じられていた映画だそうです（のちに本人が否定）。村上春樹と小説に出てくる『僕』みたいなもんですね。この映画、観た瞬間、ああ、主人公のアルビーって友達いねーんだろーなって思います。物語はオトナの恋の終わりを描いているのですが、そこにさし挟まれる、過去を現在の自分が俯瞰して眺めていたり、カメラに向かっての長回しセリフなど、斬新なセンスがとにかく素晴らしい。主人公のアルビーはとにかくひねくれていて、全てを斜に構えて見ている人物。そこには確かにウディ・アレンとアルビーを混同させる何かがあると感じさせます。こんな映画をとる人はこんな性格に違いないという願望でしょうか。

　この映画を見ていて思ったのは、僕たちは自分たちと同じような性格のアルビーと友達になれるのか問題。友達いない人のめんどくささに自分たちと違うノリの人は遠ざけてしまうが、自分たちと同じ種類の人間も近親憎悪で遠ざけてしまったりすること。ああほんとにめんどくさい・・・。しかもアルビーはキザとウィットと知性のバランスが完璧だったりするから・・・。ましてやそれを生み出したウディとなんて・・・。ともやもやしている間にまたひとりで朝を迎えました。アルビーは精神科に15年お世話になってたけど、この病気、だれか治せるもんなら治して！

（文／神田桂一）