変態であることこそ、世の中を生き抜く力。『悦楽共犯者』
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変態は褒め言葉だと思う。
チェコの神、ヤン・シュヴァンクマイエル3作目の長編作品『悦楽共犯者』。6人の変態たちが、自らの快楽を追求していく物語です。
主人公は、隣人のおばさんとサド・マゾの関係にある男。ヌード写真を貼り合わせて作った粘土細工の鶏のかぶりものをかぶり、謎の怪鳥に変身して隣のおばさんの等身大人形を痛めつける謎の儀式が、彼の快楽の得方。一方、隣のおばさんは、その怪鳥男の人形をSMプレイで痛めつけて快楽を得ます。つまり、お互いにサドであり、マゾでもあるという関係。
その他、ファーや指サック、ブラシ、釘など様々な感触が楽しめるブラシで全身マッサージをするおじさん。テレビ一体型の自慰マシーンを開発し、偏愛する女子アナをテレビ画面に大写しにして快楽にふけるおじさん。鯉に足を吸わせて快感にひたる女子アナ。パンくずを小さく丸めたものを大量生産し、耳と鼻の穴に死ぬほど詰め込む郵便配達員。が、登場。
どれもこれも、当人にしかツボがわからない変態行為ですが、特に意味不明なのはやはりパンくずの人でしょうか。丸めたパンくずをホースで吸い上げて鼻に詰め、ロートを使って耳に詰め、最後に4つ残して耳と鼻の穴に蓋をする。そして眠るだけ。でも強烈なエクスタシーを感じているということは、ものすごく目が逝ってしまっていることからわかります。ああ、彼女、幸せなんだなぁ。心からそう思います。しかしこれだけでは終わりません。使用済みのパンくずを、鯉の女子アナに配達します。そして女子アナ、そのパンくずを愛する鯉に餌として与えるのです。こんなように、6人それぞれの変態行為が、物語を通して繋がり合っていきます。
まあとにかく変態ってすげーなということではありますが、快楽を得るためにそれぞれが工夫をして自分に合った快楽の道具を作り上げていく。その様は、物作りの原点を見ているかのようです。つまり変態とは、ものすごく想像力と創造力に満ちた人のことを指す言葉なのです。社会の中で人間関係や、やらなければいけないたくさんのことに抑圧されながらも、快楽に向かって突き進める。人間は強い。快楽の持つ力は計り知れない。変態だからといって、恥ずかしがる必要はまったくないのです。変態こそ、世の中を生き抜く力なのです。変態でいこう!
(文/鬱川クリスティーン)