妄想を叶えることは、幸せではない。『ルビー・スパークス』
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- ポール・ダノ,ゾーイ・カザン,アネット・ベニング,アントニオ・バンデラス,ジョナサン・デイトン
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モテない作家が小説に書いた理想の女の子が現実に現れる。そして妄想で生み出した女の子にすらフラれる話。超傑作の『リトル・ミス・サンシャイン』のジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリス夫妻が6年ぶりに監督した新作。主演は、『リトル・ミス・サンシャイン』で筆談でしか会話しない捻くれたお兄ちゃん役を演じたポール・ダノ。彼の小説から生まれた恋人ルビーが、私生活でも恋人同士というゾーイ・カザンという、ダブルカップルによって作られた映画です。
この映画のよさ。それは「モテない人が妄想ですらフラれるということ」に集約されると思います。どんなに叶えたいと思っていた理想も、現実になった瞬間に牙をむく。だからこそ、絶対に叶わなそうな理想を妄想し続けることが、人間が幸せであるために必要なことなのかもしれない。叶いそうな妄想は抱くな!ということです。
ちなみに脚本を手がけたのは、ルビー役を演じたゾーイ・カザン。一方、物語の中ではポール・ダノがゾーイ・カザン(ルビー)を作り出しており、物語と現実が逆の構造になっているのも面白いです。男子が女子を手のひらで転がしているかと思いきや、結局女子の手のひらで転がされている男子。私生活での関係性まで含めての、一本なんじゃないでしょうか。
(文/鬱川クリスティーン)