もやもやレビュー

俯きがちな人間にだって生きる希望はあると信じたい。『アメリ』

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 今日も今日とて俯いています。友だちは自分のつま先です。

 そんな悲しきシューゲイザーを元気にしてくれるのが、今回取り上げる『アメリ』です。2001年に公開するや、オドレイ・トトゥを一躍有名にした説明無用のヒット作。ファンタジーに満ちた胸キュン映画のイメージが強い本作ですが、実際はコミュニケーション不全というテーマが盛り込まれていて、実は友だちのいない非リア充にうってつけの映画なんです。
 
 主人公のアメリは、子どもの頃から友だちがおらず、大人になっても他者との関係をうまく築けない内気な女の子。そんなアメリが青年・ニノへの恋を通じて、周囲の人たちの後押しを受けながら、自分の世界から一歩踏み出す決意をするというお話。

 まずもって、アメリのキャラクターに共感しまくります。なぜなら趣味は川で水切りをすること、休日は実家の父を訪ねる以外に予定がなく、夜は1人で自分が孤独死する未来を想像して涙を流すという、いわば非リア充なんですね。
 一方、アメリが恋するニノもまた、暗い少年時代を経ており、駅のスピード写真機の下に捨てられた他人の証明写真を集めるのが趣味。勤務先(ポルノショプ)の先輩からも「変わった子」と一言で片付けられてしまう人物です。しかしその証明写真のコレクションに頻出する「謎の男」という共通のフェティッシュが、2人の距離を近づけたわけなのですが。

 冒頭、アメリがこう言います。「他人が気付かないことに気付くのが好き」と。その言葉通り、アメリは床に這いつくばって写真を探すニノに気付いたし、そもそもニノだって誰も気にとめない証明写真のゴミに(そしてそれに萌える自分に)気付いたわけで。これって、2人が他の人と違う目線を持った、俯きがちな人間だったからではないかと思うのです。結果として同好の恋人と出会うことができたわけで、俯いていたからこそ得られた幸せなんだと。

 世間一般にいう「幸せ」っていろいろあるけれど、何も、成功者の掴む幸せだけが「幸せ」じゃないんだと思いたいのです。たとえば道端の花が綺麗だなとか昼寝してる猫が可愛いなとか100円拾ったとか、まあ幸せ沸点の低さはともかく、俯いている人にしか気付けないことって、たくさんあるんですよね。それに世の中の物事はすべて相対的であって、俯いて日陰ばかりを見つめているからこそ、太陽の眩しさにも気付けるのだと思うから。そう考えると、俯いている人の方がその「気付き」の幸せ感が大きいんですよ、きっと。なんだか、俯きがちだって幸せに生きられる、そんな希望が湧いてきました。シューゲイザー万歳やで!

 ということで、明日も張り切って俯こうと思います!

(文/ペンしる子)

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