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日本にプロムがなくてよかった! 『メリーに首ったけ』

メリーに首ったけ (完全版) [Blu-ray]
『メリーに首ったけ (完全版) [Blu-ray]』
キャメロン・ディアス,マット・ディロン,ベン・スティラー,ボビー・ファレリー,ピーター・ファレリー
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
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 キャメロン・ディアスの出世作として知られる『メリーに首ったけ』。ベン・スティラー演じる冴えない高3・テッドが、学校のマドンナであるメリー(キャメロン・ディアス)からプロムに誘われるも、当日メリーの家のトイレで大事なものをズボンのチャックに挟んでしまい大惨事になるというドタバタ劇で幕を開ける、ラブコメ界の鉄板ムービー。物語は13年後に2人が再会する話が中心ですが、大人になりこざっぱりとしてしまったベン・スティラーよりも、歯に矯正器具を付けてにんまり笑うもっさり感とした高校生のベン・スティラーをもっと観たかった! 高3のベン・スティラーは、奇跡的な存在です。

 さて、『メリーに首ったけ』の冒頭の題材であるプロム。アメリカのハイスクールムービー等によく登場しますが、主にアメリカやカナダの高校で学年末に行われるダンスパーティのことです。特に卒業の時に開かれる卒業プロムは学生たちにとって重要なものらしく、参加条件は"男女のペア"であること。だからプロム間近になると、誘う・誘われる・誘われない・誘わないの緊張感が半端ないようです。
 マジ、なんでこんな恐ろしい条件をつけるんでしょうか。一歩譲って異性ではなく、同性の友達と2人組という条件だとしてもギリギリなのに。卒業前は不登校確定ですよ。でも家に引きこもっていてすら、もしかしたら気になる彼が迎えに来てくれかもしれない!と、淡い期待を捨てきれないに決まっています。葛藤に次ぐ葛藤、からの失意。そして自転車でどこか遠くの街へ出掛け、気がついたらプロムが終わっているということにしたいです。プロムのない日本で暮らし、高校生ですらない筆者が、プロムのことを考えるだけで苦い汁を飲むような思いになるんですから、アメリカの高校生たちのほとんどが、この行事で挫折感を味わうのだと思います。ひと握りのカースト上位を除いては。
 ちなみにベン・スティラーも元々は別の女の子を誘っていましたが、「他が全部ぽしゃったらね!」という最悪な返事をもらっています。それでもベン・スティラー、泣いたりはしません。きっと断られ慣れているからです。そして、もっさりとした高3のベン・スティラーを見て、強くなろう。そんな思いを強くできる映画です。

(文/根本美保子)

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