もやもやレビュー

『リトル・ミス・サンシャイン』で知る、"負け犬"の本当の意味。

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 ビューティ・クイーンを目指す小太りのメガネ少女が、リトル・ミス・サンシャインという子どものミスコンに出場することに。父親が運転するポンコツのバスに乗り、家族総出で800マイル先のコンテスト会場を目指すロードムービーです。

 自殺未遂をしたゲイの叔父さん(自称プルースト研究の第一人者)、人生の勝ち組になることに異常な執念を燃やす父、一切声を出さない引きこもりの兄、ヘロイン中毒のエロいおじいちゃん、離婚歴のある母(家族の中ではわりとまとも)。それぞれにちょっと問題がある家族が、小太りメガネっ子の夢を通して家族の絆を育んでいくんですけど、観ないで死んだら後悔するほど超傑作でした。

 特にラストが最高です。ボロボロになった車でようやくコンテスト会場にたどり着いた小太りメガネっ子と家族。キラキラのドレスをまとった子たちとは一線を画す、謎の衣装でメガネっ子はステージに上がります。そこで披露するダンスシーンがすごすぎです。旅の途中で死んだ「おじいちゃんに捧げます」なんて心憎い挨拶にほろっとするのも束の間。おもむろに始まるのはMCハマーのあの曲です。そして、おじいちゃん仕込みのストリップダンスを踊り狂うメガネっ子。会場は失笑どころか、あまりの下品さに席を立つ人続出。

でもこれ「お前ら、空気なんて読むな! 好きなこと、信じることをやればいいんだ!!」というメッセージなんですよ、きっと。他人の目を気にしてばかりの自分にハッしますから。さらに、エロいおじいちゃんが言っていた名言「負け犬の意味を知ってるか? 負けるのが怖くて挑戦しないやつらのことだよ お前は違うだろ」も心に響きわたります。負け犬の本当の意味を初めて知った......。

 そういえば筆者も子どもの頃、安達祐実の「同情するなら金をくれ」に憧れて、田舎から遠路はるばる東京のアクターズスクールの入部試験を受けに行ったことがあります(黒歴史)。今思えばきっと心底バカバカしいと思っていたに違いないけど、母親は何も言わずに付いてきてくれました。あとで入会金やレッスン料がバカ高いことが判明し、子どものピュアな心にすらつけこむしふぉん主義ファック!と思いましたけど。ともあれ『リトル・ミス・サンシャイン』、家族の思い出や有り難みを改めて感じることができる、見逃せない良作だと思います。

(文/根本美保子)

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