『トラック野郎 御意見無用』に学ぶべき、無意味の美学。
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電車でいびきをかいたイケメンが寄りかかってきました。カップルだと思われたかもしれない。別に嬉しくなんかない。そんな日は爽快な映画を観ます。『トラック野郎 御意見無用』です。
菅原文太と愛川欽也のコンビによる、トラック野郎のための痛快"デコトラ"アクションシリーズの第一弾。観ずに死んではいけないと常々(というほどでもない)耳にしていましたが、なるほど、とてつもなく下品で最高です。冒頭から、トルコ風呂でムラムラする赤ふん一丁の文太兄。そしておっぱい丸出しのトルコ嬢たちが登場。家族で志村けんのバカ殿様を見ていた時のことを思い出します。ラストの人間すごろくでおっぱい丸出しの美女が登場して、必ずきまずくなっていましたから。でも今日はひとり。大丈夫です。おっぱい上等です。
文太兄演じるデコトラ乗りの主人公・星桃次郎の通称は一番星。桃次郎の相棒である、愛川欽也演じる松下金造の通称はやもめのジョナサン。みんなからはジョナサンと呼ばれています。
素晴らしいのはやはり、全編を覆い尽くす清々しいほどの「無意味さ」。これに尽きます。まず桃次郎のトラック。頭の部分に「日本銀行御用達」、フロントバンパーには「御意見無用」。物騒な匂いはするが、非常に意味不明です。一方のジョナサンのトラック。荷台のボディに描かれているのは、巨大な1万円札(懐かしの聖徳太子バージョン)の絵です。地方の土産物屋に通じるセンスを感じます。はたまた、桃次郎に好意を寄せる紅一点の女トラック野郎、通称モナリザお京のトラックには、案の定モナリザの絵が掲げられています。これは......美しい。
また、トラック野郎が集う食堂で給仕係をする美女に恋した桃次郎。彼女には付き合っている男性がいますが、その彼氏、いろいろあってマグロ漁船に乗ることになってしまいます。悲しみのあまりやけになってしまう彼女。そんな彼女の力になりたいと、彼女を乗せて港へトラックで爆走するのです。しかも、通常なら8時間かかる道のりを、俺なら3時間で行けると豪語。追跡してくるパトカーを振り切り、車体を泥まみれのボロボロにしながらも目的地に到着した桃次郎。そこで発したひと言は「2時間半、新記録だぜ」。......そっち!? 目的を遂行したことに対する喜びよりも、記録の方を考えていたのか......。
という具合に、無意味さが炸裂のトラック野郎。でも無意味を貫くということは、とても怖いことです。人は意味を求めてしまう生き物なのだから。そんななかで、全編にわたって無意味を貫き通す度胸には、感服せざるを得ません。
(文/鬱川クリスティーン)