『雲のむこう、約束の場所』で、中二病は最強だと思った。
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『雲のむこう、約束の場所』は、新海誠監督による長編アニメーション映画です。新海監督は『秒速5センチメートル」がキュンキュンする名作映画(こちらもアニメです)として有名。
津軽海峡をはさんで南北に分断占領された日本を舞台に、同じ中学に通うひろき、たくや、さゆりの物語。もちろん、ひろきとたくやはさゆりのことが好きです。
北海道はユニオン軍に占領され、「蝦夷」という名称に変更されており、そのシンボルとして天空に伸びる巨大な塔「ユニオンの塔」があります。ユニオン軍の正体について映画の中に説明はありませんが、小説版によると、戦後に分割統治によりソ連占領下に置かれた北海道が、1956年にユーラシア大陸の全共産国家を統合する「ユニオン圏」に統合され、1975年に南との国交を断絶した、とあります。このユニオン軍支配下の蝦夷と、米国が占領する本州とはいつ戦闘に入ってもおかしくない緊張状態になっています。
青森に暮らし、海の向こうにそびえ立つユニオンの塔を見て育った3人は、いつかみんなであの塔に行こうと約束をします。
ユニオン? 塔? 「いきなりこいつは何を言ってるんだ」と思った方。安心してください。僕も見ていてイマイチわからなかったです。「ユニオン」とか、「平行宇宙」とかそういうカッコいい言葉がいっぱいです。でも、そんなのはどうでもいいんです。僕がこの映画をみて思ったのはただ一つ。中二病はかっこいいってことです。
紆余曲折あってさゆりはずっと眠った状態になってしまいます。そしてさゆりが目を覚ますためには海の向こうのユニオンの塔に連れて行かなければなりません。大人になった2人は中学の頃の約束を果たすために、自分たちで飛行機を作り、危険を冒して塔へと出かけ、最後には爆弾で破壊して世界を救ってしまいます。さゆりも目を覚まします。なんというパワー。
中学生や高校生の頃はみんな自分には何か特別な能力があると信じていて、いつかはわからないけど本気を出すのが必要な時には何でもできる。みたいなことを考えていたと思います。爆弾で世界を救うのはちょっとレベル高すぎですが、自分には何かができると信じることは何かを成し遂げるための第一歩なのではないかと思いました。つまり、十代のあの頃を黒歴史だと思いがちですが、今も中二病でいいんですよ。むしろ、魔法が使えるとか、ある日突然使者に選ばれて天空に仕えている中二病患者にしか、世界は救えないんです! いつ中二の心を忘れちゃったんでしょうね。筆者は今でも嵐の日には「始まっちまったか」とかつぶやきますよ! すれ違うお爺さんから突然スカウトされるんじゃないかと思ってますよ! 今も頭痛ですけど、なにか能力が目覚めるんじゃないかと思ってます。
でもこの映画、「ユニオンの塔」とかスケールの大きいことを言っているクセに、きちんと学生の青春もおさえてくれています。放課後の音楽室、体育館でのバスケット、部活の後輩からの告白、好きな人との登下校、親友とのアルバイト、ひぐらしの鳴き声、みたいな、筆者の欲しかった青春が詰まりすぎていて、そこは観ていて胸をグリグリされる思いでした。キュンキュン中二病になりたい方はぜひ。素敵な映画です。
(文/前髪ナガレ)