もやもやレビュー

『恋の罪』で女の業を突きつけられる。

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 あぁ。4日間かかりました。『恋の罪』を見た後の重い気分から這い上がるのに。園子音監督だし、現実の殺人事件をモチーフにしているし、セックスとか全裸とかばんばんでてくるし...。なんたって、「犯罪×エロス」ですから、見るタイミングの見極めは重要です。そんなわけで、鼻息荒く決死の覚悟で見ました。もちろん、一人で。だって、こういう作品を友達と見たなんて人、私はなんだか信用できません。
 90年代に起きた東電OL殺人事件からインスパイアされたオリジナルストーリー。事件となった渋谷区円山町のラブホテル街を舞台にしていますが、事件の真相に迫るものではありません。メインテーマは、女性が抱えているであろう「抑圧からの解放」。ラブホテル街で売春を生き甲斐にしている高学歴の女性・三津子、三津子に出会い乾きを自覚してしまう貞淑な人妻・いずみ、この二人が巻き込まれた殺人事件を追うのが、どうでもいい不倫をして仕事と日常とのバランスを保っている女刑事・和子、3人の女性の壊れて行く様は、理屈ではないところでたぶん女ならわかると思います。そして自分も同じ女であることが恐ろしい。彼女達との境界線が案外曖昧で不確かなこともわかるから。
 なにより印象深かったのが、いずみを演じた、「神楽坂恵」という女優です。インモラルな世界に堕ちていくほどに、彼女の表情は覚醒していきます。解き放たれたのか、狂ってしまったのかわからないけれど、とにかく輝いています。他の2人はあくまで女優でしたが、彼女のそれは演技ではなく、演じる中で「生」に目覚めていくプロセスがスクリーンに映し出されているんだろうなぁ。女の本当にこわい瞬間を見てしまった気がします。本当にこわいのは、女子アナみたいに解りやすいハングリーな女ではなく、自分の乾きにすら無自覚な女。目覚めてしまったら、果てがない、底がない、そんな女を見事に怪演しています。なんでも、彼女はこの作品を経て監督と結婚したそうです。まぁ、余談ですけど。なんか色々オーバーラップさせちゃいました。
 グロイとは思うけど、エロくはありません。気分転換で見たら、火傷する作品です。覚悟して見てもダメージは負いましたけど。こんなとき友達がいたら、感想とか言い合って少しは消化できるんでしょうか...。

(文/森 亜紀子)

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