連載
二階堂武尊のB★CINEMA ブッダものけぞる映画笑論

第19回 「あまロス」気分のこの秋、アニメ『日常』でさらなる脱力気分に。

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 どーもです。いやー、『あまちゃん』終わっちまいましたなー。ペットが死んで、その喪失感から鬱状態になってしまうことを「ペットロス」と言います。でも、チマタでは、「ペットロス」ならぬ、「あまロス」という人々もたくさんいるそうですな。『あまちゃん』が終わってしまって、何も楽しみがなく、落ち込み気分になってしまうという恐ろしい状況がこのニッポンに蔓延している模様です。

 そんなときは、無理に明るい映画をみて、テンションをあげようとはせず、むしろ脱力系コンテンツで、より深く脱力の底まで行ってはみませんか。

 人気アニメ『日常』はそんなときに最強のアイテム。時定高校の脱力3人娘を中心に、時定市なる街の人々がくり広げる「終わらない日常」。

 超ハイテンションなお間抜けキャラ・主人公の相生祐子をはじめとする3人娘のおバカ&大ボケシーンは、とりあえず、腹を抱えて笑えるワケですが、このアニメ、サブキャラ陣が非常に楽しいのであります。

 特に、「東雲研究所」という名の一軒家に同居しているロボット高校生・東雲なのと、「なの」を作ったらしい「はかせ」という少女、「はかせ」に拾われてきた黒猫の「阪本」の掛け合いが絶妙に楽しいです。なんで、こんなキャラを考えついたのか、原作者の方には脱帽であります。

 大財閥の御曹司としての噂が高い笹原幸治郎は知的で取り澄ましたクール男子ですが、ヤギに乗って通勤したり、召使いを従えていたり、謎の人物。そんな笹原を銃器で爆破する立花みさとも楽しい。

 でも、何と言っても、オヤジゴコロを揺さぶるのは、担任の桜井先生。こーゆー人、いるいる。なんかいつもおどおどしていて、生徒たちに敬語で話しかけます。弱気な性格を克服しようと生徒指導を志願しますが、その弱気な言動が、オヤジのSゴゴロにがぜん火をつけます。「せんせー、おれのもみあげ、カットしてくれや」とクダをまきたい気持ちになります。

 というわけで、本作はシリーズ物なのですが、ツタヤに行くと、必ず、途中の巻がレンタル中という状況です。でも、おがまいぬぐ。どれから見ても、ほとんど一緒ですから。秋の日に、缶ビール片手に、この超なごみ系アニメを見て、亡き『あまちゃん』を偲ぶのには最適の作品です。まったりしすぎて、翌日、会社に行くのがイヤになっちゃうかもしれませんね。

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二階堂武尊(にかいどう・たける)

1964年生まれ。大手出版社勤務の後、独立。近著に『29歳からはじめる ロックンロール般若心経』(フォレスト出版)、『ぎゅーたん!「十牛図」で学ぶプチ悟りの旅』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。リストラ、転職や借金、それらにともなうメンタルな病理などに、長いサラリーマン体験を生かしたユニークな対処法を提案。高校生から中高年まで幅広いファンの支持を得る。一見、ふざけているのかと思われる作品群の奥に、仏教的な癒しや悟りの感覚を漂わす。ブルースとジャズを愛する陽気なオッサン。無類の犬好きでもある。
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