第17回 「輪廻」のクサリを断ち切る、 痛快奴隷ムービー
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仏教の用語で、「輪廻」(りんね)という言葉があります。人間は死んでも、また新たに生まれてきて、自分の宿命を永遠に生きなければならないという恐ろしい考え方です。
特に、古代インドでは、「カースト制度」なるものがありました。
バラモン(神聖な職に就いたり、儀式をする)、クシャトリヤ(王や貴族など)、ヴァイシャ(商業や製造業従事者、「平民」と訳される)、シュードラ(人々の嫌がる職業の人、「奴隷」)の4階層のどこかで先祖代々生きなければなりませんでした(そーいえば、いま、日本でも「学校内カースト」なるものも話題になっていますね)。
特に、最下層に生きる人たちは、自分の親も自分も子孫も全部奴隷です。それ以外の生き方はないのです。
古代人は、この「輪廻」から、一刻も早く抜け出して、極楽でのほほんと過ごすことを目指して、修行をしました。
17世紀から19世紀にかけて、大量の奴隷がアメリカ大陸に渡りました。数百万人の奴隷が、南部の綿花畑などで強制労働させられていました。南北戦争(1861年 - 1865年)における北軍の勝利により、南部の奴隷労働制は廃止され、奴隷はやっと解放されます。
アメリカ南部の奴隷たちは、ギター片手にブルースをむせび泣きつつ、永遠に続くかと思われた地獄のような日々を耐えて過ごしてきたのでしょう。アメリカ版「輪廻の悪夢」ですね。黒人の奴隷の歴史を綴った超大作『ルーツ』では、クンタ・キンテという主人公を通して、当時の凄まじい奴隷生活が感動的に描かれていますので、ぜひ見てください。
さて、今回のいかれた映画を作ったのは、みんな大好きタランティーノ師匠です。毎回、裏切りませんな。主人公はもちろん、クールで超かっこいいのですが、私が腹を抱えて笑ったのは、ディカプリオやサミュエル・L・ジャクソンなどの演じる黒人差別主義者たちのこっけいな演技(サミュエル・L・ジャクソンは黒人なのに、黒人差別主義者を演じています)。
見応え満載です。タランティーノ自身もボケ役で出てきてます。
奴隷の主人公・ジャンゴは奴隷商人に売り飛ばされた妻を奪還するために、相棒のドイツ人と、賞金稼ぎの仕事をはじめます。やがては幾多の困難を乗り越えて、妻と再開して白人たちを皆殺しにして、「奴隷」という「輪廻の輪」から離脱することに成功します。
なんでこの映画が痛快かというと、一見、黒人たちからしてみればどうすることもできない、奴隷制度という強固で希望のない「輪廻」の世界を、荒くれヒーローがぶっ壊すからです。だから、爽快なんです。
あなたもいま、「学校内カースト」「社内カースト」「ママ友内カースト」などでがんじがらめで苦しんでいるかもしれませんかが、たとえ、もうどうしょうもない状況だと思えても、必ず突破口はあります。『ジャンゴ』を見て、勇気を持ってください。