連載
二階堂武尊のB★CINEMA ブッダものけぞる映画笑論

第15回 思わず2度見した中毒性の高い毒舌
『テッド』の傍若無人な楽しさ

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 いゃー、どうもどうも。人生、さまざまなしがらみでがんじがらめですな。上司の顔色、友人の間での立ち位置、彼女のご機嫌・・・。

 仏教では、「常識を捨てろ」とよく言います。常識の息苦しさは、他人と自分を比較して、自分の振る舞いを決めなくてはならないことです。その点、昔の中国の禅僧や、日本で言えば、一休さんなどはすごかった。他人の「常識」を笑い飛ばし、自分の思うままに、自由に生きていました。

 さて、『テッド』です。このテディベア、ただ者ではないですよ。とはいえ、スーパーヒーローというわけではありません。R15だし、決して子どもには見せたくない映画です(笑)。ブラックジョークを振りまき、大麻やコカインはやるわ、酒は飲むわ、暴力を振るうわ、デリヘル嬢をたくさん家に招くわ、果ては、バイト先の女の子と、野菜でファックするわ(おちんちんがないから)、傍若無人の行動を繰り返します。

 だけど、この最悪のクマがとても爽快感があるのはなぜでしょう。
 それは、このセカイの常識は「クソ」だ、と考えているからです。そんな「常識」なんて、おかまいなし。まわりの人間たちも、動揺して、テッドを途中で、排除しようとしますが、最後はテッドを受け入れます。それは人間が、「常識」だけでは、息苦しくて、生きていけないからです。

 仏教に話を戻しますと、人間の苦しみはすべて「比較する心」から生まれると考えられています。「おれより、あいつのほうが給料が2万円高い」「あいつは正社員、おれはフリーター」「あの子の彼氏は一流企業、私の彼氏はブラック企業」「あの子は私より、モテる」などなど、私たちは四六時中、比較をして苦しんでいます。ここがポイント。「比較をする心」さえ、捨ててしまえば、人生、ガゼン、楽チンになります。

 あなたが、自分の境遇をまわりの友だちと比較して落ち込んでいるなら、テッドは言うでしょう。「そんなつまんねえ奴らのこと、考えてるぐらいなら、『フラッシュ・ゴードン』観ながら、カウチでヤクでもキメようぜ」と。そうそう、もっと自分の人生を楽しまないと。というわけで、私も思わず、2度見して、ずいぶん気分が楽しくなりました。日本語吹き替え版も十分楽しめます。

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二階堂武尊(にかいどう・たける)

1964年生まれ。大手出版社勤務の後、独立。近著に『29歳からはじめる ロックンロール般若心経』(フォレスト出版)、『ぎゅーたん!「十牛図」で学ぶプチ悟りの旅』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。リストラ、転職や借金、それらにともなうメンタルな病理などに、長いサラリーマン体験を生かしたユニークな対処法を提案。高校生から中高年まで幅広いファンの支持を得る。一見、ふざけているのかと思われる作品群の奥に、仏教的な癒しや悟りの感覚を漂わす。ブルースとジャズを愛する陽気なオッサン。無類の犬好きでもある。
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