連載
二階堂武尊のB★CINEMA ブッダものけぞる映画笑論

第18回 ある意味、『山月記』。どんどん子ども化するデカたちが悲しい『コドモ警察』。

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 高校生の頃、中島敦の『山月記』という短編小説を教科書で読んだことはないでしょうか。唐の時代の小役人が山中でだんだんと虎となってしまう悲しいお話です。

 神奈川県警・大黒署特殊捜査課のメンバーは新人刑事をのぞき、すべてがコドモ。宿敵・レッドヴィーナスの罠にはまって特殊ガスを浴びた面々は、姿をコドモにされてしまったのです。

 それでもボスを演じる鈴木福くんも、彼女はいるし、祐次郎ばりにグラス片手に「ブランデーグラス」などを歌うなど、オトナとしてのプライドは維持しているわけです。ところが、捜査も佳境に入った頃、コドモの身体としての本能に負けて、ドライブインでたこ焼きみたいなスナックを食べたり、ソフトクリームで口の周りをヌラヌラさせてしまうのです。さらに、山中で渓流の遺留品を探しているとき、サワガニ取りに夢中になったり、木々を見ると、クワガタを探したりなど、捜査に支障を来してきます。

「コドモとしての本能がおれをむしばむ」みたいなことをうめくシーンは、笑いどころなのですが、私は思わず冒頭の『山月記』を思い出してしまったのです。

 不肖、この私も来年は五十歳。歳をとるごとに、幼児化していくのがはっきりとわかります。父が晩年、お絵描きに夢中になったり、コンビニの店内で商品のジャムパンをむしゃむしゃと食べてしまった光景は、まさにリアルな悪夢として私にも迫りつつあります。最近では、私も酔っぱらうと女友達に赤ちゃん言葉で話しかけてみたり、森永ミルクキャラメルを携帯したりして、幼児化ははなはだ切実な問題で、福くんのナイスな演技も神妙な面持ちで鑑賞させていただきました。

 人間は進化する生き物であるとはいいますが、果たしてそうでしょうか。結局、みんなコドモに戻っていくというのが、私の持論です。

 この楽しいB級映画で出てくるコドモたちの演技は笑えましたが、コドモばっかり見ていると、脇を固める吉瀬美智子、指原莉乃、北乃きいたちオトナ女優陣がなんとも艶かしく見えるのは、なぜでしょうか。圧巻は、北乃の赤いボンデージ風衣装の後ろ姿。そのまぶしいフォルムを見るだけで、この映画を見てよかったと思いました。いや、そこがいちばんよかったー。

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二階堂武尊(にかいどう・たける)

1964年生まれ。大手出版社勤務の後、独立。近著に『29歳からはじめる ロックンロール般若心経』(フォレスト出版)、『ぎゅーたん!「十牛図」で学ぶプチ悟りの旅』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。リストラ、転職や借金、それらにともなうメンタルな病理などに、長いサラリーマン体験を生かしたユニークな対処法を提案。高校生から中高年まで幅広いファンの支持を得る。一見、ふざけているのかと思われる作品群の奥に、仏教的な癒しや悟りの感覚を漂わす。ブルースとジャズを愛する陽気なオッサン。無類の犬好きでもある。
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