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二階堂武尊のB★CINEMA ブッダものけぞる映画笑論

第9回 BOYS MEET JAZZ。新芽のように清々しい青春恋愛物語。『坂道のアポロン』

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木々の緑や風が爽やかな季節になってきましたね。学校では新学期、社会人は人事異動などもあり、出会いと別れが交錯する時期でもあります。

「一期一会」という言葉は、誰もが聞いたことがあるでしょう。人と人はこの世界でたぐいまれなる偶然のもとに出会いを得ているのです。そんな一時一時の出会いを大切にしたいものですね。その偶然によって手に入れた愛や友情は、自分の人生を形作る重要な土台となることもあります。

九州の地で巡り会ったこの映画の登場人物3人もまた、奇跡のような一期一会を大切に育くみ、素晴らしい青春を生きました。しかも、この3人を結ぶ絆は、なんとジャズ。

ジャズとは、基本的にセッション、つまり即興演奏を基本とします。それぞれの楽器の奏でる音たちがぶつかり合い、そこに起きる化学変化を楽しむ芸術です。つまり一音一音が、まさに一期一会のコミュニケーションなのです。一人が悲しい音を出せば、もう一人が悲しい音で応じる。一方で、ケンカ腰のセッションでは、お互いの意地を自らの楽器に託してぶつけ合う。

ビル・エヴァンスを連想させる主人公の薫と、アート・ブレイキーのやんちゃさを地でいく千太郎のセッションもまた激しく、時に切なく、2人の友情の豊かさを見事に描ききっていますな。

生のセッションを通して、律子を含めた青春と彼らの成長を綴った本作は、切なさと新芽のような清々しさあふれる映像劇。全編を流れるジャズも、私のようなオールド・ファンも楽しめる内容だし、オープニングのYUKI、エンディングの秦基博の曲も素晴らしい。

いつもはくどくどと抹香臭いコラムを書く私ですが、今回は、アニメであるということもあり、陽気にみなさんにこの作品をお勧めいたしやしょう。楽しんでください。

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二階堂武尊(にかいどう・たける)

1964年生まれ。大手出版社勤務の後、独立。近著に『29歳からはじめる ロックンロール般若心経』(フォレスト出版)、『ぎゅーたん!「十牛図」で学ぶプチ悟りの旅』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。リストラ、転職や借金、それらにともなうメンタルな病理などに、長いサラリーマン体験を生かしたユニークな対処法を提案。高校生から中高年まで幅広いファンの支持を得る。一見、ふざけているのかと思われる作品群の奥に、仏教的な癒しや悟りの感覚を漂わす。ブルースとジャズを愛する陽気なオッサン。無類の犬好きでもある。
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