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二階堂武尊のB★CINEMA ブッダものけぞる映画笑論

第6回 『闇金ウシジマくん』を観て、 ワル〜いことについて考えてみた

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どーもです。今回は「悪」について考えてみたいと思います。

日本の昔の思想家で親鸞というお方がいます。その人は、「悪人正機説」という考えを打ち出しました。「善人ですら救われるんだから、もちろん悪人は救われる」という考え方です。善人は、よいことをして救われたいと努力しますが、悪人はよいことをしようとする器量もないのですから、仏さまがほっとかない、という考え方です。

「ワルいコトをしても救われるんなら、ワルいことしたもん勝ちじゃね!?」とみなさんは思うかもしれませんが、だからと言って、人間、簡単に人を殺せるかと言えば、そんなことはみんなしません。みんなそれぞれの器量を持っていて、それ以上のことは結局はできないんです。

さて、別の面から「悪」を考えますと、やっぱり「悪」はよろしくないと思うんですね。というのは、「悪」も煩悩のひとつみたいなもので、決して、心が安らがないからです。ワルいことをすればするほど、それはのどの渇きのように、次から次へと「悪」を呼び寄せます。人を傷つけ、仲間を裏切り、盗みをして、果て薬物やら何やら・・・きりがないです。

で、やっと話はウシジマくんになるのですが、ウシジマくんが、ある意味、クールで爽快に見えるのは、そこに「欲望」や「煩悩」が見えないからです。きわめてストイックな男ですよね。悪事を重ねる人は、何かの「依存症」であるわけなんですが、ウシジマくんは何にも依存していない。だから、「悪」なのに、かっこよく見えるわけですよ。でも、実際には、ワルくてストイックな人って、なかなかいないですよね。それがこの暗黒のヒーローを生み出した背景だと思います。

結局、この映画の登場人物で、欲を捨てられたのは、大島優子ちゃんが演じたヒロインとウシジマくんだけ。あとは、欲の中で溺れ死んでいく人たちだけ。

理屈なく、痛快な映画ですが、漫画の方はもっと凄惨でっせ。キモい人がたんさん出てきます。あわせてお楽しみください。あなたもワルを気取るなら、とびきりストイックに。

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二階堂武尊(にかいどう・たける)

1964年生まれ。大手出版社勤務の後、独立。近著に『29歳からはじめる ロックンロール般若心経』(フォレスト出版)、『ぎゅーたん!「十牛図」で学ぶプチ悟りの旅』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。リストラ、転職や借金、それらにともなうメンタルな病理などに、長いサラリーマン体験を生かしたユニークな対処法を提案。高校生から中高年まで幅広いファンの支持を得る。一見、ふざけているのかと思われる作品群の奥に、仏教的な癒しや悟りの感覚を漂わす。ブルースとジャズを愛する陽気なオッサン。無類の犬好きでもある。
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