連載
二階堂武尊のB★CINEMA ブッダものけぞる映画笑論

第5回 もし、ブッダがフェイスブックのCEOになったら・・・ 『ソーシャル・ネットワーク』の行く末は。

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どーもです。仏教の世界では物事にはじめも終わりも存在しない、などと変なことをいいます。世の中の出来事はいつもこの瞬間にはじまり、そしてこの瞬間に終わっています。はじまりも終わりもないということは、言い換えれば、この瞬間にすべてがはじまり、すべてが終わってしまっているのです。

みなさんは、憧れの仕事をゲットすることが、人生のゴールと考えるかもしれません。理想の彼氏と結婚することが、ゴールだとも考えるかもしれません。
確かにそれはひとつの終着点であり、ハッピーエンドの形かもしれません。でも、それと同時に、その仕事や結婚が執着という「悪夢」のはじまりになる可能性も潜んでいるワケです。はじまりと終わりは同時に存在しているのです。

この映画はザッカーバーグ氏がビジネスを軌道に乗せるまでの、ある意味、青春成功ストーリーでありますが、見終えた人たちに、決してカタルシスは与えてくれません。むしろ、これから始まる高度資本主義社会の中で、いろいろタイヘンなことが待ち受けているんだろうなあ、というほの暗いイメージを残します。あれだけいろいろな人を裏切り、見捨ててきたんです。これからだって、彼のビジネス人生にはドロドロした人間劇がたくさん待ち受けているはずです。

ところで、彼は2013年のいま、フェイスブックは成功していますが、これから先も、成功し続けるんでしょうか・・・成功するかもしれませんし、後発の新しいSNSサービスに追い越されてしまうかも知れませんね。生き馬の目を抜くIT業界ですから、一寸先は闇です。日本でもITバブルの頃、羽振りを利かせていたIT社長たちのほとんどもみな、消え去ってしまいました。

般若心経では、すべての物事には実体がない、と言っています。もっと簡単に言えば、この世はすべて「幻」だと言うことです。形というものは、いつか崩れたり、消えてしまうのです。「永遠」などと言うものはこの世界には存在しないのです。そんなものに、執着して必死で守ろうとするとノイローゼになりかねないです。
ブッダは出家する前、インドの王国の跡取り息子でした。彼は、世の中に実体がない、移り変わるはかないものだと気づき、国と妻と子どもを捨てて、修行の旅に出ました。

思えば、ザッカーバーグ氏も「幻」を持ちすぎました。もし、ザッカーバーグ氏の立場に、ブッダが置かれれば、ブッダは地位や名声、お金を捨てて、プイッと旅に出てしまうことでしょう。

あなたがいま、お金や仕事や恋人にとても執着して苦しいのならば、思い切ってすべてさっぱりと処分してみるのも手です。人は手の内が空っぽになると、不思議と生きるパワーが生まれてくるものです。

 人間、手ぶらで、バカがいい。

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二階堂武尊(にかいどう・たける)

1964年生まれ。大手出版社勤務の後、独立。近著に『29歳からはじめる ロックンロール般若心経』(フォレスト出版)、『ぎゅーたん!「十牛図」で学ぶプチ悟りの旅』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。リストラ、転職や借金、それらにともなうメンタルな病理などに、長いサラリーマン体験を生かしたユニークな対処法を提案。高校生から中高年まで幅広いファンの支持を得る。一見、ふざけているのかと思われる作品群の奥に、仏教的な癒しや悟りの感覚を漂わす。ブルースとジャズを愛する陽気なオッサン。無類の犬好きでもある。
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