連載
怪獣酋長・天野ミチヒロの「幻の映画を観た!怪獣怪人大集合」

第100回『アリゲーター 愛と復讐のワニ人間』

アリゲーター 愛と復讐のワニ人間 [レンタル落ち]
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『アリゲーター 愛と復讐のワニ人間』
2001年・タイ
監督・脚本/スザット・アンタラヌパコン
出演/ウィナイ・クライブット、ジェット・パドゥンタム、ワナサ・トンウィセットほか
原題『KRAY THONG』

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 今回で連載100回目? いや~ここまで好き放題書かせてもらった奇特な担当さんに心から感謝します! だからといって100回記念に併せた作品は特に用意してなくて、流れのままワニ映画特集・第3弾をお送りしよう。
 筆者はこの作品のDVDを15年ほど前に発見した際、「愛と復讐のワニ人間って何?」と興味を惹かれて購入した。第97回で紹介した『人喰いワニ ジャイアント・クロコダイル』を生み出したタイ映画界が、21世紀にはどんな作風で巨大ワニを見せてくれるのか期待を膨らませた。だが予想もしなかった内容に「そうきたか!」と驚愕するのであった。


 昔々、大河の流域に点在する村落でのお話。正月を控えたある日、10メートルもある巨大ワニ(導入初期のショボいCG)が出現し、あちこちの村で人を食い殺す(川岸に転がる村人らの手足)。ここである村の村長が、新年行事にワニ退治の志願者を招待し、仕留めた者には財産の半分を与えると公布する。

 そんな豪気な村長には、タパオケウとタパオトンという美人姉妹の娘がいる。だがタパオトンを木陰から見つめ、狙っている男がいた。その男の正体は、一帯のワニを束ねるワニ王チャラワンだった。すると近くにいた1匹のワニがシュ~っと人間の形に変わっていき、四つん這いになった女になる。このヴィマラという女、ヤキモチを焼いたチャラワンの妻だ。ヴィマラに扮した女優を調べてみると、『クレイジー・ドリーム・カラオケ』に出ていたシャンパンXだそうだ。作品も芸名も何だか気になる(笑)。

 ワニ退治にやってきた「素潜りの名人」と評判のクライトーンもタパオトンに一目惚れする。互角の美貌をもつタパオケウは、冴えない男にモテる可哀想な役回りだ。筋骨隆々ボディに甘いイケメンのクライトーンを演じたウィナイ・グライブットは、タイでは有名なアクション俳優らしい。そして正月になり、行事の最中に川からワニ王チャラワンが出現! チャラワンは賞金稼ぎの攻撃を全て跳ね返し、タパオトンを口にくわえて川底の洞窟へ連れていき、人間の姿になってレイプしてしまう。

 しばらくしてクライトーンが洞窟を突き止めるが、そこで見たものは美女2名によるシャワー浴びシーン。ヴィマラと、もう1人は違うタイプの色気を持つルワム。チャラワンには2人の妻がいたのだ。薄い衣服の布が濡れてスケチクしている女達を、クライトーンは生唾飲み込みながら覗き見する。ここら辺から映画は巨大生物パニックを離れ(つーか元々そういう作品ではなかった)、タイ式昼メロの様相を呈してくる。

 2人の妻が人間の女と一緒にいるチャラワンの寝室に現れ「一体どういう事?」と修羅場に。「この子は奴隷だし」と言い訳するチャラワンに突然クライトーンが斬り掛かり、さらに修羅場。激戦の末、クライトーンはチャラワンに重傷を負わせタパオトンを救出する。だがタパオトンはワニに処女を奪われたショックで失語症になっていた。オロオロする家族だが、とにかく娘が生きて帰って嬉しい村長は、姉妹ごとクライトーンの嫁に授ける。羨ましいぞ、クライトーン!

 翌日、挙式が始まると(早い早い!)、初めて敗北を知ったチャラワンが超能力で嵐を起こして邪魔をする。そこへ現れたのは、かつて妻をワニに食われて以来、復讐のためワニ漁を続け、近所のガキ共から「ワニじじい」とバカにされているソーイ爺さん。ソーイはクライトーンに、チャラワンを倒せばタパオトンの声が戻り、奴を倒すには7種の金属で作る錆びない銛を作れと教える。だがワニになったルワムがチャラワンの敵討ちに現れ、負傷しながらもソーイと戦い殺してしまう。

 クライトーンは錆びない銛を携え、再びワニ男の巣窟へ出陣する。クライトーンはヴィマラを捕まえ、武器を隠していないか体を調べているうちにエロイ気分に。ヴィマラもイケメンに体を触られているうちに吐息が激しくなる。潤んだ目で見つめられ、我慢できなくなったクライトーンはヴィマラをベッドに押し倒し性交(おいコラ)。そこへチャラワンが戻って来て「貴様~」と再戦開始。チャラワンはワニの姿になり、戦場は水上に移る。両雄の決闘を見守る村人の前で、見事チャラワンを仕留めたクライトーン。タパオトンの声が戻り「クライトーン!」と叫ぶ。岸に引き上げられたチャラワン(10メートルの作り物)を、「こいつめ、こいつめ」とボコボコに足蹴する村人。

 さて、なぜかクライトーンは洞窟に戻り、負傷しているルワムに「お前がソーイを?」と問い詰める。だがルワムに「優しくして。血が怖いの」とエロイ目で見つめられたクライトーンは、そのままベッドに押し倒して性交(こらー!)。そこへ現れたヴィマラが泣きながら「チャラワンを殺したあとに彼女を抱いたの?」。クライトーン「私の妻にする以外、彼女を救う道はなかったんだ」。ヴィマラに「私は?」と言われたクライトーンは、優しく2人を抱き寄せる。数年後、平和な村の風景が映し出され、川遊びをしている男の子にはワニの尻尾が生えていた。終わり。

 クライトーンが村と川底の洞窟を行ったり来たりして、美女4人とエッチする「英雄色を好む」を地で行く話。タイでは舞台化もされるピチット県に伝わる有名な民話を元に映画化したものだった。ワニ映画特集は一旦これで終了。では、よいお年を!

(文/天野ミチヒロ)

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天野ミチヒロ

1960年東京出身。UMA(未確認生物)研究家。キングギドラやガラモンなどをこよなく愛す昭和怪獣マニア。趣味は、怪獣フィギュアと絶滅映像作品の収集。総合格闘技道場「ファイトネス」所属。著書に『放送禁止映像大全』(文春文庫)、『未確認生物学!』(メディアファクトリー)、『本当にいる世界の未知生物(UMA)案内』(笠倉出版)など。
世界の不思議やびっくりニュースを配信するWEBサイト『TOCANA(トカナ)』で封印映画コラムを連載中!

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