連載
怪獣酋長・天野ミチヒロの「幻の映画を観た!怪獣怪人大集合」

第91回 『宇宙からのツタンカーメン』

『宇宙からのツタンカーメン』※VHS廃番

『宇宙からのツタンカーメン』
1984年・米・83分
監督/トム・ケネディ
脚本/トム・フリードマン、カレン・レヴィット
出演/ベン・マーフィ、ニナ・アクセルロッド、ケヴィン・ブロフィほか
原題『TIME WALKER』

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 ピラミッドは太古に地球を訪れた宇宙人が作った......なんていうオカルト系トンデモ仮説を題材にした映画と思いきや、展開はその斜め上を行く。そして「あっ!」と驚くオチ(筆者は「えっ?」だった)に、作品はマニアの間でカルト化した。

 この作品、日本では劇場未公開だったが、かつてテレビ朝日が『宇宙から来たツタンカーメン 消えたミイラ! 全裸美女に迫る古代エジプトの魔神』という東京12チャンネル(現テレビ東京)的なタイトルで放映した。で、のちにテレビ東京でも放映されたが、原題に準じた『タイム・ウォーカー 時空の聖櫃』という惹きの弱いタイトルに甘んじた。ここはテレ朝の勝ち!

 ここからストーリーを紹介するが、ネタバレするので「あっ!」と驚きたい方はビデオ時代のマニアックな映画を復活してくれるフォワードさんから発売されたDVDでどうぞ。


 マカデン教授率いるカリフォルニア科学大学の学術調査隊が、ツタンカーメンのピラミッドで発見した謎の棺を大学に持ち込む。中には緑色のカビが生えた包帯で全身を巻かれたミイラがあり、内蓋に記された象形文字は「高貴な旅人」と翻訳される。ミイラのX線撮影が行われるが、助手の不注意から通常の10倍という危険レベルのX線を浴びせてしまう。

 しばらくして研究スタッフのシャープが、棺の引き出しから5個の美しいクリスタル玉を発見、それをくすねて宝石商へ売りにいく。だが「価値なし」と鑑定されガッカリしたシャープは、女を口説きたい友人に「プレゼントにどう?」と売りつけ、借金している友人には「これで勘弁して」と玉を拡散させてしまう。その頃、ミイラの胸にも付いている玉がウルトラマンのカラータイマーみたいにチカチカと点滅し始め、ミイラがムクッと起き上がる。

 ミイラのマスコミ発表の日、準備中のスタッフが棺に付着したカビに触れて倒れ、病院に運ばれる。それでも会見は続行されるが、蓋が開けると中はカラッポ。騒ぎを大きくしたくない学長は、どよめく報道陣と教授に口止めをして、自分達でミイラ窃盗犯探しを始める。

 そんな騒動にも我関せずの軽薄シャープは、玉で作ったペンダントを恋人のエレンにプレゼント。2人が部屋でイチャイチャしていると、ペンダントの玉がチカチカ光り出し、そこへミイラが出現! ミイラがペンダントを奪い取る際、濃厚接触したエレンは病院へ運ばれ全身カビだらけになって死亡する。大量に放射されたX線が数千年間眠っていたカビを急速に繁殖させ、ミイラまでも蘇らせてしまったのだ。

 その後、X線写真によりミイラの骨格が人間とは異なると判明。巻物からは「砂漠で衰弱していた異形の男をツタンカーメンは神と考え『高貴な旅人』と呼ぶが、彼に触れてから病に罹り死亡。旅人は生きたままツタンカーメンの遺体と共に埋葬された」と解読される。ミイラは仮死状態の宇宙人で、ツタンカーメンの死因は異星から持ち込まれたカビだった! ......って、ツタンカーメンは宇宙から来てないし

 その頃、大学の地下動力室に潜んでいたミイラは、玉を乗せる場所が5つ空いている三角形の機器に、奪い返した玉をカチッと設置している。玉が5個集まると願いでも叶うのか? ドラゴンボールか!? ミイラは夜な夜なキャンパス内をさまよい、シャープから渡った玉を持つ者を襲っては回収していき、研究スタッフの女性がシャワーを浴びている浴室にも侵入する。あ、ここがテレ朝の『全裸美女に迫る古代エジプトの魔神』か。

 やがて教授が動力室で三角器を発見するが。「やっぱりオマエか」と待ち構えていたのは学長、教頭、ガードマン。教授をミイラ窃盗犯と思い込んでいる3バカトリオだ。そこへミイラが戻り、彼らに目もくれず最後の5つ目の玉を三角器にカチッとコンプリート! さあ、何が起こるのか!

 まず室内の電源がすべて落ち真っ暗になる。そして三角器からミイラの胸の玉に光が注がれ、電子音楽による「ジャジャ~ン♪」という劇的なファンファーレはほとんど『未知との遭遇』。そして包帯の中から姿を現したのはグレイタイプの宇宙人。浅はかな教頭はアホのガードマンに「撃て!」。弾丸は宇宙人を庇う教授の肩に命中。倒れた教授が宇宙人に手を伸ばすと、向こうも手を差し伸べてくる。『ET』の名シーンまで頂きと思いきや、唐突にプツッと2人の姿が消えてしまう

 床にはポツンと玉が1つ転がっていて、それを無造作に拾ったバカ教頭は「ああ~!」とカビだらけの手を押さえて悲鳴を上げる。そこへ宇宙空間が映し出され「TO BE CONTINUED(つづく)」で完。続編は作られなかったが(汗)、マカデン教授は、その後どうしているのだろうか......。


 ラストシーンは2人が宇宙人の星か宇宙船へ転送されたということだろうが、最大の見せ場なのに劇的な演出が何も行われず、大昔のトリック映画みたいにパッと2人が画面から消えるだけ。この唐突感は、他の映画ではなかなか体験できるものではない。

 黄金の仮面で有名なツタンカーメンは、紀元前14世紀に在位していた古代エジプトの少年ファラオ(王)。発掘関係者が次々と不遇の死を遂げていく「ファラオの呪い」に、世界中が凍り付いたこともある。DNA研究が進んだ現在、ツタンカーメンの死亡推定年齢は19歳で、先天性疾病だらけの体は近親交配によって生まれた遺伝子異常による可能性が強いとされている。だがそんな興味深い研究成果も、この作品では全く関係なかった。

(文/天野ミチヒロ)

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天野ミチヒロ

1960年東京出身。UMA(未確認生物)研究家。キングギドラやガラモンなどをこよなく愛す昭和怪獣マニア。趣味は、怪獣フィギュアと絶滅映像作品の収集。総合格闘技道場「ファイトネス」所属。著書に『放送禁止映像大全』(文春文庫)、『未確認生物学!』(メディアファクトリー)、『本当にいる世界の未知生物(UMA)案内』(笠倉出版)など。
世界の不思議やびっくりニュースを配信するWEBサイト『TOCANA(トカナ)』で封印映画コラムを連載中!

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