連載
怪獣酋長・天野ミチヒロの「幻の映画を観た!怪獣怪人大集合」

第90回 『巨大ネズミの襲撃』

『巨大ネズミの襲撃』※VHS廃番

『巨大ネズミの襲撃』
1976年・アメリカ・88分
監督・脚本/バート・I・ゴードン
出演/マージョー・ゴートナー、パメラ・フランクリン、ラルフ・ミーカーほか
原題『FANG/THE FOOD OF THE GODS』
1977年日本公開題『巨大生物の島』

***

 2020年の干支は子。ネズミ・パニック映画と言えば『ウィラード』(71年)、その続編でマイケル・ジャクソンの主題歌が大ヒットした『ベン』(72年)といった名作が真っ先に挙げられる。が、ここで紹介するのは、CGなき時代のアナログ特撮が泣ける『巨大生物の島』。今回は敢えて干支に絡めて、日本公開時のタイトルではなくVHSビデオ発売時の『巨大ネズミの襲撃』を表題とする。

 製作は、ロジャー・コーマンなどのB級作品を多く作り続けてきたサミュエル・Z・アーコフ率いるAIP(アメリカン・インターナショナル・ピクチャーズ)。アーコフは前年に大ヒットした『ジョーズ』(75年)に便乗し、H・G・ウェルズの小説『神々の糧』の巨大生物パニック部分だけを抜き出して映画化。これに最適任だったのが、アリ、クモ、イナゴ、トカゲ、人と、様々な生物が巨大化する作品ばかり作ることから、名前のイニシャルをとって「ミスターB.I.G.」と呼ばれたバート・I・ゴードン監督だった。
 多用された特撮は、スクリーン・プロセスという古典的な合成技法。スクリーンの裏側から生きている生物を撮影した映像を映写して投影。そのスクリーンの前で俳優に演技をさせて撮影したものが作品のフッテージとなるのだ。


 アメフト選手のモーガン(マージョー・ゴートナー)、チームメイトのデービス、広報のブライアンが離島でシカ狩りを楽しんでいる。一人で森の奥へ深追いするデービスが「ブーン」と音がする頭上を見上げると、カラスほどある巨大なハチの群れが! 1匹がブブブと下りてきてデービスの背中に取り付く! 悲鳴を聞いたモーガンが駆けつけると、デービスは死んでいる。

 モーガンは電話を借りようと農場を見つけ、何気なく家畜小屋を開けてみると、中には牛サイズのニワトリが! 巨大ニワトリは「コケコケ!」とクチバシでモーガンを突っつき足爪で引っかく(頭と足だけの作り物)。農具の三又フォークで巨大ニワトリを刺し殺したモーガンは、母屋にいたオバサンから「夫が発見した白い液体をニワトリの餌に混ぜた」と聞く。夫婦の管理が杜撰で、液体はハチやイモムシに飲まれていたのだ(オバサンは30センチもあるイモムシに手を噛まれる)。だが、さらに危険な動物がこれを飲んでいた。液体の売り込みに本土へ渡っていた夫が船着き場から車で帰宅する途中、いきなり窓をブチ破って車内に首を突っ込んできたのは巨大なネズミの顔(作り物)! 夫はズタズタに噛み殺される。

 やがて農場に登場人物が集結する。液体の契約を交わすためやってきた飼料会社の社長ジャック。そこで研究を任される女性細菌学者ローナ。検死でデービスの死体から250匹以上のハチの毒が検出されたと知って戻ってきたモーガンとブライアン。脱輪したキャンピングカーが巨大ネズミに占領され逃げてきた若い夫婦(奥さんは妊娠中)。

 ここから後半はモーガンによるネズミ虐待ショーだ。まずモーガンは農業用バッテリーを農地に張り巡らされた鉄条網に通電させる。ネズミ達(本物)が鉄線に触ると火花がバチバチッと散る(実際に通電させている)。感電したネズミ達はビックリして走り出し湖に入水していく。通常のネズミなら泳げるが、巨大化したネズミなら体重で沈むと踏んだモーガンの作戦が的中する。

 モーガンらは窓に板を釘付けて母屋に籠城する。戦いの中でブライアンとジャックが噛み殺され、若旦那のトーマスが新戦力となり、モーガンと共にライフルで巨大ネズミを撃ちまくる。血糊を噴き上げ手足をバタバタさせてリアルに吹っ飛ぶ本物のネズミらは本当に痛そうだが、これって撃たれるシーンを表現する仕掛け「弾着」だよね......本当に撃っていないよね......。

 モーガンは弾丸から取り出した火薬を瓶に詰めた手製爆弾を作り、それを投げて「ドカン!」と巨大ネズミ達(本物)を吹っ飛ばす。だが窓を割って入ってきた巨大ネズミがオバサンを噛み殺し、トーマスの妻が「ああ、生まれそう」(汗)。壁まで巨大ネズミで覆い尽くされた母屋の2階では、ローナが「きばって!」と人生初の産婆。

 最後の手段と、モーガンは手製爆弾でダムを破壊する。水流に飲み込まれたネズミ達は「キーキー」と鳴いて次々に溺れていく。水中シーンでは本物のネズミが無理やり溺れさせられている(泣)。1階は水に漬かり、家の周囲には動かなくなったネズミ(本物?)がプカプカ。ラストは白ボスがモーガンにライフルの銃身で頭をカチ割られ、ピクピク痙攣して水中へドボン。やがて島は越冬し、放置されていた液体の瓶が雪解け水に流されて川をドンブラコ。下流の放牧地帯へ流れ着き、水を飲みに来ていた牝牛達が瓶から漏れ出た液体を飲んでしまう。小学校の教室で、子供が牛乳を飲んでいるシーンで完。


 原作では巨大チルドレンが登場するが、続編『巨大小学生の島』(笑)は製作されなかった。さて、紛らわしいことに『SF巨大生物の島』(61年)という作品がある。こちらはジュール・ヴェルヌ原作の映画化で、巨大化したカニ、ミツバチ、ニワトリ、オウムガイを人形によるストップモーション・アニメ特撮のレジェンド、レイ・ハリーハウゼンが担当した。『巨大生物の島』より15年も前に作られたにも関わらず、特撮のクオリティーは圧倒的に高く作品自体も面白い。1979年に『巨大生物の島』が日本テレビの「水曜ロードショー」で放映された時、まるで『SF巨大生物の島』の続編を装うかのように『新・巨大生物の島』となっていたのは、いかがなものか(苦笑)。

(文/天野ミチヒロ)

« 前の記事「怪獣酋長・天野ミチヒロの「幻の映画を観た!怪獣怪人大集合」」記事一覧次の記事 »

天野ミチヒロ

1960年東京出身。UMA(未確認生物)研究家。キングギドラやガラモンなどをこよなく愛す昭和怪獣マニア。趣味は、怪獣フィギュアと絶滅映像作品の収集。総合格闘技道場「ファイトネス」所属。著書に『放送禁止映像大全』(文春文庫)、『未確認生物学!』(メディアファクトリー)、『本当にいる世界の未知生物(UMA)案内』(笠倉出版)など。
世界の不思議やびっくりニュースを配信するWEBサイト『TOCANA(トカナ)』で封印映画コラムを連載中!

BOOKSTAND

BOOK STANDプレミアム