連載
怪獣酋長・天野ミチヒロの「幻の映画を観た!怪獣怪人大集合」

第67回 <怪獣ブーム50周年企画 PART-11>『ガメラ対宇宙怪獣バイラス』

ガメラ対宇宙怪獣バイラス 大映特撮 THE BEST [DVD]
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●「怪獣ブーム」とは
 今から51年前の1966年1月2日、記念すべきウルトラシリーズの第1作目『ウルトラQ』が放送を開始した。『鉄腕アトム』や『鉄人28号』などのアニメを見ていた子供達は、一斉に怪獣の虜となった。すでにゴジラ映画は6本を数え、前年の1965年にはガメラがデビューした。『ウルトラQ』終了後、これに拍車を掛けたのが同時期に始まった『ウルトラマン』と『マグマ大使』。見た事もない巨人が大怪獣を退治していく雄姿に、日本中の子供達のパッションがマックスで弾けた。
 これに触発された東映も『キャプテンウルトラ』『ジャイアントロボ』『仮面の忍者赤影』と次々に怪獣の登場する番組を制作。大映はガメラのシリーズ化に併せて『大魔神』を発表し、日活と松竹も大手の意地を見せて参戦した。そして少年誌はこぞって怪獣特集記事を組み、怪獣関連の出版物や玩具が記録的セールスを計上した。これは「怪獣ブーム」と呼ばれる社会現象となり、『ウルトラセブン』が終了する1968年まで続いた。
 ちなみに『帰ってきたウルトラマン』『仮面ライダー』が始まる1971年から1974年にかけて再ブームを起こすが、これは「第二次怪獣ブーム」(「変身ブーム」ともいう)と呼ばれ、最初のブームは「第一次怪獣ブーム」として厳密に区別されている。

◆◆◆

『ガメラ対宇宙怪獣バイラス』
1968年・大映東京・72分
監督/湯浅憲明
脚本/高橋二三
出演/本郷功次郎、渥美マリ、篠田三郎ほか

 シリーズ4作目の『ガメラ対宇宙怪獣バイラス』は、50年前の春休み(3月20日封切り)に公開された。ガメラが初めて宇宙怪獣と戦うこの作品は、米国では子供番組としてテレビ放映されるため、「日本人の子供の顔はみな同じに見える」という米国側の意向で(失礼な!)白人の子供を出演させ、以降これがシリーズのお約束となる。また米国の子供番組の規制上、勧善懲悪が必須で、今まで怪獣を倒すが建物を壊し人も殺してきたガメラは、完全に子供の味方として描かれた。
 だが、これまで潤沢だった予算が、大映本社の深刻な営業不振により前作『大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン』の3分の1と大幅に削減され、撮影日数もわずか25日! これらを踏まえて、ストーリーを解説していこう。


 タイトルが入る前なのに、早くもバイラス星人の宇宙船とガメラの戦闘が始まる。劣勢の船長は母星の司令部に2号機の派遣を要請して逃げ出すが、そこへガメラがトドメの火炎放射。船内に声が響く。「地球上に恐るべき生物を発見せり。その名は......」。ここで宇宙船がドカーン! 画面一杯に「ガメラ」の文字がバーン! インパクト抜群のオープニングだ。流れる『ガメラマーチ』を歌う大映児童合唱団は、そこら辺の子供達を集めて歌わせた存在しない合唱団っていう話も凄いぞ!

 舞台は葉山海岸に移る。海岸ではボーイスカウトがキャンプを張っていて、隊長役はシリーズの常連で大映のスター・本郷功次郎。そして隊員の中には面白い人達がチラホラいる。5年後『ウルトラマンタロウ』の主役でブレイクする篠田三郎。翌年の『いそぎんちゃく』や『でんきくらげ』などお色気映画「軟体動物シリーズ」で人気女優となる渥美マリ。八代順子は特撮番組『ザ・カゲスター』(76年)の怪人・豹女(画像ググルと爆笑)。また内野惣次郎さんという筆者の友人もいて、この人は『ウルトラQ』や『ウルトラマン』にも出演し、現在は鉄人28号のトップコレクターとして鉄人マニアで知らない人はいない。

 キャンプを抜け出した正夫とジムは、近くにある国際海洋研究所の小型潜水艇に悪戯して、プラス・マイナスをアベコベに配線する。潜水艇の訓練が始まり研究所の博士と隊長が乗り込むと、全て反対に作動するので大慌て。正夫とジムが上手に運転するので、何も知らない博士は驚く(後でばれる)。

 ここでバイラス宇宙船2号機が早くも地球に到達。バイラス星人は「スーパーキャッチ光線」と呼ぶ光の檻で、海底にいるガメラを閉じ込めてしまう。その間バイラス星人はガメラの記憶を映像再生して(すごい科学力だ)弱点を探る。ここは経費を浮かすため旧作の映像を流用したので、まず『大怪獣ガメラ』のガメラ初登場シーンが白黒で映し出され(白黒映画だから仕方ないけど......)、カラーに戻りバルゴン戦とギャオス戦を延々と見せるが、本郷功次郎が別の役で映ってしまっている(おいおい)。

 さてバイラス星人の分析結果は「ガメラは強くて勝てそうにない(よ、弱気な)が、唯一の弱点は子供だ」と、作品の世界観を如実に代弁する(笑)。宇宙船は浜辺にいた正夫とジムをスーパーキャッチ光線で捕獲し、「ガメラに告ぐ。我々を攻撃すれば2人の少年の命はない」。そう、なぜかガメラは日本語が分かるのだ。

 船内には人間の姿をした乗組員達がいて、暗闇に光る不気味な目が喋るたびにピカピカ明滅する。これは俳優の瞼に豆電球を仕込んだ特殊メイク用素材を貼り付けたのだが、数人が豆電球の熱で瞼を火傷したそうだ(汗)。

 船内で自由行動を許される2人が暗い部屋に入ると、正夫が「ジム、何だか生臭くないか」。よく見ると3mほどあるイカのような生物が檻の中で6本の触手をクネクネ揺らしている。渥美マリの「軟体動物シリーズ」は、ここが原点か? 「きっとどこかの星から連れてこられて動物園かサーカスに売られ、そのあと解剖されるんだよ」と正夫は言う。

 子供を人質に捕られたガメラはバイラス星人に脳波コントロール装置で操られ都市を破壊し始め(ここも旧作の映像)、ニューヨーク国連本部は降伏を決定する。この窮地に隊長が2人の悪戯を思い出し、「ガメラのコントロール装置を逆にしてみろ」と通信機で2人に伝える。隙を見て正夫はコントロール装置とスーパーキャッチ光線のプラス・マイナスをアベコベに入れ替え、宇宙船から脱出に成功する。

 ガメラも命令を逆に捉え宇宙船を攻撃し始めたので、船内はパニックに。イカの部屋に逃げ込んだ乗組員達は「ボス! 助けてください」。イカが船長だったのだ。ガメラに付いていたコントロール装置も外れ、「最後の手段だ」とボスは乗組員の首を触手で次々と刎ねていく。すると首の穴からニョキニョキとバイラス星人の頭部が生えてくる。ボスは分裂させた自分の体を人間に寄生させ部下にしていたのだ。それらが1体ずつボスに合体していく。1体取り込むごとに6メートル、12メートル、24メートルと、倍々計算で巨大化していくので付いた名前がバイラス(笑)。

 こうして96メートルに(ガメラは60メートル)達したボスは、ついにガメラと直接対決! ガメラはバイラスの体を使って水上スキー(本作から導入した湯浅監督のギャグ)するなど劇場の子供達を大喜びさせるが、それも束の間、仰向けにひっくり返されたガメラに惨劇が! バイラスの頭の3枚のヒレがピタッと合わさり槍状になり、空中に高く跳び上がるとガメラ目がけて急降下。「グサ~!」とガメラの腹に深々と突き刺さるバイラスの頭。「キャ~ッ」(劇場の子供達)。バイラスはいったん頭を抜いたあと流血しているガメラの腹の大穴に「グサッ、グサッ、グサッ」と3回も刺しまくる。刺さるたびに頭と手足を出したり引っ込めたりするガメラがユニーク......いや子供達にはトラウマだ! ガメラ絶体絶命(普通、死ぬでしょ)!


 作品は「ガメラシリーズ」最後の作品として製作されたが、大ウケして予想外の大ヒット。大映は次回作を決定した。ちなみに併映は、妖怪を特撮で表現した『妖怪百物語』。この年、1月からアニメ『ゲゲゲの鬼太郎』が放送を始め子供達の間で大人気を博し、「怪獣ブーム」に替わる「妖怪ブーム」の到来を予感したプログラムだった。

(文/天野ミチヒロ)

<おまけ>

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公開に合わせて発売されたソノシート(朝日ソノラマ) ※筆者私物

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1971年に発売された日東科学社のソフビ人形。なぜか赤い(警戒色?) ※筆者私物

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天野ミチヒロ

1960年東京出身。UMA(未確認生物)研究家。キングギドラやガラモンなどをこよなく愛す昭和怪獣マニア。趣味は、怪獣フィギュアと絶滅映像作品の収集。総合格闘技道場「ファイトネス」所属。著書に『放送禁止映像大全』(文春文庫)、『未確認生物学!』(メディアファクトリー)、『本当にいる世界の未知生物(UMA)案内』(笠倉出版)など。
世界の不思議やびっくりニュースを配信するWEBサイト『TOCANA(トカナ)』で封印映画コラムを連載中!

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