第66回 『地獄の犬(さけび)』
- 『地獄の犬(さけび)』
原題『DEVIL DOG:HOUND OF HELL』
1978年・アメリカ・95分(劇場未公開)
監督/カーティス・ハリントン
脚本/スティーブン・エリノア・カーフ
出演/リチャード・クレンナ、イベット・ミミュー、キム・リチャーズほか
ビデオ廃番
※パッケージは筆者私物
戌年にちなんだ犬映画特集の第2弾! 『エクソシスト』『オーメン』『サスペリア』など悪魔映画全盛期の70年代に、悪魔が憑依するのはワンちゃんという『地獄の犬(さけび)』がテレビ用映画として製作された。日本ではレンタルビデオが始まった頃の1984年に、紙箱のパッケージでビデオ発売された。筆者はそれを所有しているが、正直言って内容を完全に忘れている。テープをビデオデッキに入れ、数十年ぶりに再生してみよう。
ある日、犬のブリーダーのもとに、黒ずくめの男女が黒塗りのワゴンで乗り付け、売り物ではない繁殖用のメス犬・レディー(シェパード)を、100万円超えの大金を積んで強引に買い取る。その夜、レディーは怪しい魔法陣の中に繋がれて怯えている。壁には三つ目の悪魔の絵が架かり、中年女が怪しい呪文を唱えている。サタニストによる、1000年前に封じ込められた悪魔の復活祭だ! それから数カ月後......。
大工場を経営するマイクは、優しく美しい妻、明るく健康な子供たちに恵まれリア充な生活を送っていた。だがある日、飼い犬が車に撥ねられて死んでしまう。目撃していた隣家のジョージによると、黒いワゴンによる轢き逃げだという。
その日は奇しくも、犬を一番可愛がっていた娘ポニーの誕生日だった。傷心のポニーは兄のチャーリーと当て所もなく外をブラブラ。そこへ野菜の直売車が通りかかると、荷台には子犬が10匹。一緒にいる母犬は、どこかで見たようなシェパードだ。「抱いてごらん」と八百屋のオヤジに勧められ、渋々子犬を抱っこするポニーだが、あまりの可愛さにイチコロ。気前よく子犬をポニーに譲るオヤジは「よかったな、レディー! オマエの息子をもらってくれたよ」。よく見たら八百屋のオヤジも悪魔集会にいたメンバーだ。10匹の子犬たちは、悪魔がレディーをレイプして生ませた魔犬だったのだ!
ポニーは子犬にラッキーと名付け、沈んでいた一家は明るさを取り戻す。だがラッキーを一目見て「旦那様、あの犬は不吉です」と忠告してきた霊感の強い家政婦が、家の中で丸焼け死体になって発見される。また兄妹が母親に反抗的な態度を見せ始め、その母親も人が変わってしまう。母親は、隣の犬がラッキーを恐れて朝から晩まで吠えているので、お隣さんとして15年も仲良く付き合ってきたジョージに向かって「近所迷惑だわ。始末すれば?」と冷たく言い放つ。翌朝、ジョージの愛犬はズタズタ死体で見つかり、「ラッキーに殺された」と騒ぐジョージも自宅のプールに死体で浮かぶ。すべてラッキーに殺されたのだ。
級長選挙でチャーリーが不正を働き、ポニーも嘘を付いたり窃盗したりと、子供たちの素行もどんどん悪くなっていく。子供の心配をするマイクに奥さんは、「チャーリーのことで担任の先生の家に行き誘惑してきた」と笑いながら話す。驚いたマイクは真相を求め先生の家に向かう。だがその頃マイクは、頭から2本の角を生やし、ライオンのようなタテガミをなびかせた巨大な黒い怪物に襲われ、家から車道に飛び出したところを通り掛かった車に撥ねられ即死する。ラッキーが悪魔の本性を現したのだ。
マイクは、深夜に奥さんと子供たちが、三つ目の悪魔を崇拝し、怪しい儀式を行っていることを知る。すべてはラッキーが来てからだと、マイクは家族の猛反対を跳ね除け、ラッキーを山へ捨てに行く。殺すつもりだ。だがマイクがいくら銃撃しても、ラッキーは悪魔なので全く効き目がなく傷ひとつ負わない。
マイクはワラにもすがる思いでオカルト研究家のオバサンの所へ行くと、それは犬の姿で現れる悪魔バーゲストで、三つ目の悪魔は最強クラスの悪魔、エクアドルの郊外に同じ絵が残っていると教えられる。マイクはエクアドルに飛び、数千年前に描かれた三つ目の悪魔の壁画を見に行く。そして山奥に住んでいる聖者に会い、マイクの右の掌にフリーメーソンみたいな一つ目ピラミッドを描かれ、悪魔祓いの秘術を授かる。
アメリカに戻ったマイクは、決着を付けるためラッキーを自分の工場に誘い込む。ラッキーは先生を襲った時より巨大化し、象並みのサイズに! マイクが右手をかざすと、聖者が描いた掌のイラストから眩い光が照射! 悪魔バーゲストは炎に包まれ、三つ目の怪人に姿を変え悶え苦しんで消える。家に帰ると、家族は元に戻っていた。だが最後にチャーリーが一言。「子犬は10匹いたんだ。あとの9匹はどこに......」。
マイクを演じたリチャード・クレンナは、『ランボー』全作でランボーの元上官役でお馴染み。奥さん役は、H・G・ウェルズ原作の『タイム・マシン 80万年後の世界へ』(60年)のヒロイン、イベット・ミミュー。
そして、悪魔犬に操られる可憐な美少女ポニーを演じたキム・リチャーズは、『大草原の小さな家』(74年)など売れっ子の子役(撮影当時13~14歳)。姉と妹も女優で、パリス・ヒルトンは姪に当たるが、その半生が波乱万丈!
プロのポーカープレーヤー、石油王の息子と短期間で結婚離婚を繰り返したキムは、1991年に8000人の高齢者を騙した大詐欺師と電話で話している最中(どんな交友?)、そいつは至近距離からヒットマンに射殺される(汗)。2015年にキムは、竜巻に吸い上げられた人食いサメが町に降って来る人気バカ映画「シャークネード・シリーズ」の3作目『シャークネード エクストリーム・ミッション』で、ユニバーサル・スタジオ・フロリダの職員を演じるが、4月にビバリーヒルズ・ホテルで泥酔して警官に暴行。8月にはディスカウントストアで万引き未遂で逮捕され、それぞれ拘置所で一泊している。悪魔祓いした方がよいのでは?
(文/天野ミチヒロ)