連載
怪獣酋長・天野ミチヒロの「幻の映画を観た!怪獣怪人大集合」

第50回 『U.F.O.仮面ヤキソバン 怒りのあげ玉ボンバー』

『U.F.O.仮面ヤキソバン 怒りのあげ玉ボンバー』
1994年・69分
監督/植木善晴
脚本/小杉哲大
出演/マイケル富岡、デーブ・スペクター、高田万由子、オスマン・サンコンほか
ビデオ発売/ビクターエンタテインメント(廃盤)

 今年の夏、懐かしいテレビCMが復活した。1993年から1995年にかけて放映されていた「日清焼きそばU.F.O.」のU.F.O.仮面ヤキソバンが約20年ぶりに登場したのだ。

 54歳になったヤキソバンは無職で、人々から忘れ去られ、どう見ても不審者。「見ちゃいけません!」と母親が子供の目を隠し、ヤキソバン・グッズは全品200円に値下げしても売れ残り、日清食品本社に仕事をもらいに行けば全社員から無視され、居酒屋に行けば「ヤキソバマンだ!」と名前も間違えられ笑い者に......。

 ヤキソバンに扮装しているのは、当時と同じマイケル富岡。ここ数年は12股(!)などでバラエティ出演も多い。でも元のヤキソバンってどんなだっけ? 実は当時、CMのスピンオフ作品として映画が作られていた。で、その出演者らがソースのように濃い(笑)。ストーリーを追いながら紹介していこう。

 地球から100億キロ離れたヤキソバーン星のヤキソバン王子は、モリソバーン星のセーラー姫との政略結婚が嫌で、執事(『太陽にほえろ!』のチョーさんこと下川辰平)を従え、妃を探しに地球へとやってくる。王子は、地球では日村清太郎(日清ね)と名乗り、スーパーマンのクラーク・ケントのように新聞社......ではなく、その社員食堂(メニューはU.F.O.のみ)で働く。上司(WAHAHA本舗の柴田利恵)に何か言われれば「ソースか(そうすか)?」「ソース(そうす)ね」と答える清太郎。実際、マイケル富岡がキャスティングされた理由は、「究極のソース顔だから」だそうだ。

 清太郎は、ひとたび女性の悲鳴を耳にすれば、たとえ仕事中であっても職場放棄し、仮面ライダーに似た変身ポーズで「ユーフォー!」と叫んでヤキソバンに変身し現場へと駆け付ける。必殺技は、ベルトの左右ホルスターに差したソース容器を抜き、2丁拳銃による「ソース・ビーム」、揚げ玉をぶつける「あげ玉ボンバー」、青のり光線「青のりフラッシュ」だ。

 そして、それは単なる人助けではなく、ヤキソバンは暴漢退治をしながら「年下、身長170センチ、体重55キロ、容姿端麗にて心が清い」という妃の条件を満たす女性を探していたのだ。だから不良に絡まれているオカマ(WAHAHA本舗の梅垣義明)は助けない。

 この頃、シカゴから来日してU.F.O.の美味しさに衝撃を受けたケトラー(英語でヤカンはケトル)は、ヤカンのお湯で作るU.F.O.が一番美味いと気付き、他の人にU.F.O.を食わせたくないため、秘密組織を作り日本中のヤカンを盗んでいた。当時ケント・ギルバートやケント・デリカットらに続いて「変なガイジン」で売り出し中のデーブ・スペクター(実際、シカゴ出身)が、ヤカンを頭に被り、取っ手を顎にかけて怪演していた。

 また組織にはオスマン・サンコンもいて、ケトラーの部下にヤカンを盗ませておいて、自分は黒いカーテンと同化して女性の部屋を覗いていた。この「黒バックに顔」は、現在のテレビでは絶対不可能な(笑)当時のサンコンの持ちネタだ。

 ある日ヤキソバンは社員食堂で、条件にピッタリな写真部の久美子に一目惚れする。久美子役は、現在は音楽家・葉加瀬太郎の夫人で東大出身タレントとして知られる当時22歳の高田万由子(実際の身長は164センチだが)。東大在学中の1991年に篠山紀信が撮影する『週刊朝日』の表紙モデルをきっかけに、『たけし・逸見の平成教育委員会』などを経てお茶の間の人気者になっていた頃だ。

 久美子が仕事でヤキソバンを追うことになったと知る清太郎は、ここが勝負と「僕の勘では、ヤキソバンは江南三丁目の日の出倉庫のあたりにいます」。「本当ですか!」と疑いもせず信じる久美子もなんだが、とにかく清太郎はヤキソバンに変身して、いそいそと彼女が待つ埠頭に行くと、海で人が溺れているではないか。久美子はヤキソバンが救出する瞬間を撮ろうとするが、ヤキソバンは水が苦手だった! 結局、久美子が海に飛び込んで救出。翌日の新聞の見出しは「衝撃スクープ ヤキソバンはカナヅチだった」。久美子は落ち込むヤキソバンに「水が苦手だったの? でも、誰しも完璧なんかじゃないわ!」と励ます。

 これで立ち直ったヤキソバンはケトラー一味と対決する。なぜかサンコンは、にせヤキソバンに変身していて、頭の容器は別社のように四角く、胸とベルトのバックルには「U.S.O.(うそ)」と書かれている。ヤキソバンはサンコンとケトラーを倒すが、彼らに強力な援軍がやって来る。久美子に嫉妬するモリソバーン星のセーラー姫(戸川純の姉、戸川京子。2002年、首吊り自殺)だ。セーラー姫はケトラーにヤキソバンの弱点を教える。

 ケトラーは遊園地にヤキソバンを誘い出し、水鉄砲で水責めにして戦闘不能にする。執事は失神したヤキソバンを自宅に運び、「これは万が一の時にと大王様からお預かりしていたパワーアップ・ソースでございます」とベルトに付いている容器に注ぐ。パワーアップしたヤキソバンはケトラーに見事リベンジし、戦いの後には赤いリボンの乗ったザルそば(セーラー姫の正体)が転がっていた。ラストは、アニソン界の大御所・影山ヒロノブが歌う「あいつが正しいヤキソバン」が流れて完。

 昨年12月に放送された『耳が痛いテレビ 芸能界カスタマーセンター』(日テレ)で、マイケル富岡の1億円豪邸が公開されたが、書斎にヤキソバン・グッズがきちんとディスプレイされていたのには泣けた。こうなると新作が観たくなる。同じキャストに加え、1995年度CMの女性版ヤキソバン「ヤキソバニー」の松雪泰子に土下座してでも(私やりますよ)出てもらい、ケトラーの息子役にはなべやかんで、続編『帰ってきたヤキソバン』を作ってください、日清さん!

(文/天野ミチヒロ)

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天野ミチヒロ

1960年東京出身。UMA(未確認生物)研究家。キングギドラやガラモンなどをこよなく愛す昭和怪獣マニア。趣味は、怪獣フィギュアと絶滅映像作品の収集。総合格闘技道場「ファイトネス」所属。著書に『放送禁止映像大全』(文春文庫)、『未確認生物学!』(メディアファクトリー)、『本当にいる世界の未知生物(UMA)案内』(笠倉出版)など。
世界の不思議やびっくりニュースを配信するWEBサイト『TOCANA(トカナ)』で封印映画コラムを連載中!

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