第28回 『悪魔のサンタクロース2 鮮血のメリークリスマス』
- 『悪魔のサンタクロース2 鮮血のメリークリスマス』
原題『SILENT NIGHT,DEADLY NIGHT 2』
1987年・アメリカ・88分
監督/リー・ハリー
出演/エリック・フリーマン、ジェームズ・L・フリーマンほか
クリスマスといえばサンタクロース。全世界の子供達に夢を運ぶ人気者・サンタさんを題材にした映画は多く、それらはみなハートウォーミングなお話だ。だが、これがスプラッターとなると勝手が違う。キリスト教圏の欧米としては、悪魔の映画は作れても、サンタが人を殺しまくる映画なんておいそれと作れず、その数は少ない。その証拠に今回紹介する作品の1作目は、アメリカやイギリスで上映禁止騒動が起きているのだ。しかし今回なぜ続編の『2』を? それはこれから説明していこう。
クリスマスイブの精神病院。医師がテープレコーダーで録音しながら、リッキーという若者に問診をしている。リッキーは黙っていればマッチョでイケメンの好青年風だが、不敵な態度で声を荒げ、明らかにイカレテいる。リッキーの回想シーンが始まる。
まだリッキーが幼い頃、一家はクリスマスイブの夜にサンタクロースに扮装した強盗と遭遇し、父親は射殺され、母親は眼前でレイプされそうになり抵抗して刃物で刺殺。リッキーと兄のビリーは運よく助かる。この件は前作『悪魔のサンタクロース 惨殺の斧』からの再録シーンで、続編に入る説明として必要なプロローグだ。
兄弟は修道院の孤児院に入るが、翌年のイブの日、ビリーはシスターが部屋に男を連れ込んでセックスしているのを覗き見する。そこへ院長が現れ「エッチは悪い事。悪い事をしたら必ず制裁を受ける。制裁は正しい事」と説教し、ビリーはシスターと共にベルトで尻叩きの罰。この日から厳格な院長によるビリーへの虐待同然の躾が始まる。
ビリーは18歳の時に孤児院を出てオモチャ屋に就職するが、不幸にもクリスマスシーズンだったため、トラウマになっているサンタの格好を嫌々させられる。そこで無邪気な幼女が膝の上に乗っかってくるのを性行為とみなし(汗)「君がやっている事はとても悪い事だ。悪い子にはオモチャじゃなくて重い罰を与えるよ」とメッチャ怯えさす。
そんなアブナイ奴に育ってしまったビリーは、倉庫で店員同士のエッチを目撃したのをキッカケに「制裁だ」と、その店員から店長までも皆殺しにし、薪割り用の斧を持ってサン姿のまま町に出る。そしてエッチする者と暴力を振るう者を殺して回り、「俺がこうなったのも全て院長のせいだ」とビリーは孤児院に行き院長を狙うが、刑事に射殺される。と、ここでようやく前作のおさらいが終わる......おいおいここまで40分も使っているぞ! というわけで、『2』を紹介して2作分楽しんでもらおうという年末大出血サービスでした。では引き続き後半へ。
弟のリッキーは、クリスマスとは無縁な宗教の家庭に養子として入り幸せに暮らしていたが、エッチや暴力を見ると兄と同じ発作を起こし、相手が恋人だろうと誰であろうと「制裁だ」と言って殺してしまうようになる。そして「ホールドアップ!」と駆け付けた警察官もリッキーは銃を奪って撃ち殺し、「あははは」と笑いながら次々と人を殺して町の中を徘徊。こうしてリッキーは病院に収容されたのだが、ここで回想シーンが終わり、「うまくいかないな、人生ってのは」と言って医師の机に近寄ると、そこには首にレコーダーのテープが巻かれ既に死体となっている医師が!
病院を脱走したリッキーは、わざわざサンタに扮装して院長の家に侵入する。車椅子に乗る老いた院長は、気丈にもナイフを構え「あなたはベリーベリー悪い子よ」。リッキーは鬼の形相で「それはオマエだ!」と斧を振り下ろす。そこへパトカーで急行した刑事達だが、時既に遅くポロッと落ちる院長の首。院長の背後にいたリッキーを刑事が撃つ。リッキーはサンタ姿で本懐を遂げ、そして果てる。
作品は、公開前から全米のキリスト教団体やPTAによって公開中止の声が上がり、物議を醸した末、数州で上映が見送られた。またイギリスでは全英映像等級審査機構の判断により、公開もビデオ販売も却下された。結局、作品は騒動により皮肉にも知名度を上げ、サンタを出さずに『SILENT NIGHT,DEADLY NIGHT』のタイトルのまま、パート5までシリーズは続いた。ちなみに、過去に『サンタが殺しにやってくる』(80年・米)という類似作品があったが、運よくこのように騒がれる事はなかったという。