第19回 『デッドリー・フレンド』
- 『デッドリー・フレンド』
原題『Deadly Friend』
1986年・アメリカ・91分
監督/ウェス・クレイヴン
脚本/ブルース・ジョエル・ラビン
出演/マシュー・ラボートー、クリスティ・スワンソンほか
※ビデオ廃盤
ホラー映画の巨匠、ウェス・クレイヴン監督の隠れた佳作『デッドリー・フレンド』。この作品は『エルム街の悪夢』(84年)が大ヒットした後の1986年に日本でも劇場公開されながら、あまり話題に上ることもなく、ホラー関係本でもほとんど記述が見つからない「忘れられた作品」だ。しかしアメリカではリメイクが進行中らしいので、日本のホラーファンの皆さんも知っておいて損はなかろう。
この作品の肝は、衝撃のラストシーンに集約されているといっても過言ではない。現時点で日本盤DVDは発売されていないが、これから米国盤を輸入して鑑賞するつもりなら、オチは絶対に読まないで(笑)。まあ「衝撃のラスト」といっても、様々な作品が出尽くした現在と違って、あくまでも「80年代時点での」ということなので。
15歳のポールは、米国一の医療工学大学で研究助手を務めている天才少年。ちなみに、1990年にTBS『水曜ロードショー』で放送された時の吹き替えは、かつて天才子役と呼ばれた坂上忍(当時23歳)。ポールが趣味で作ったロボット「BB」は遠隔操作ではなく、プログラミングされた人工頭脳で勝手に判断して動く。車上荒らしを退散させ、ポールに絡んだ不良はブチのめし、庭の芝刈りまでしてしまうと、お掃除ロボット「ル○バ」の100倍便利。同年公開のヒット作『ショート・サーキット』に登場するロボット「ジョニー5」に激似だけど(苦笑)。
ある日ポールとBBは、隣家の少女サマンサ達とバスケをやっていて、近所で評判のキ○ガイババアの敷地内にボールを入れてしまう。ババアはボールを返さないどころか、取り返しに来たBBをライフルで撃ってメチャメチャに壊してしまう(涙)。不幸は続く。サマンサは、奥さんに逃げられアル中になった父親によって日常的な虐待を受けていたが、悪酔いしたクソオヤジに2階から突き落され脳死状態に。
ここで、BBもガールフレンドも失ったポールが暴挙に出る。病院内に侵入し、保管していたBBのバッテリー内蔵電子頭脳を「心臓のペースメーカーと同じ原理」とサマンサの脳に埋め込む。リモコンで電源オンすると目をパチッと開け、オフにすると目を閉じ脱力するサマンサ。電気人形となったサマンサを家に持ち帰るポール。
やがて「死体が消えた」と町は大騒ぎ。ここから後半はBBの能力を宿したサマンサが復讐モンスターとなって大暴れ。まずサマンサは父親を襲う。死んだはずの娘を見て慄く親父の指や手首や首をベキベキへし折り、仕上げは暖炉に突っ込み焼却。お次はババア。ダン、ダン、とバウンドしてババアの部屋に転がってくるポールのバスケットボールに続いて登場するという、セルフ演出が粋なサマンサ。サマンサがババア目がけてボールを投げつけると、ボールは顔面に当たり頭部がパカーンッとスイカのように砕け散る(ええ?)。首なしババアの体が部屋の中を右往左往(笑)。
あっという間に大騒動となり、ポールの家の納屋に逃げ込んだサマンサは、ポールの顔を見て少女の記憶が蘇る。だが時すでに遅く、警官隊に包囲され観念したサマンサは、ホールドアップを無視して警官に突進! わざと撃たれ、ポールの腕の中で最期を迎える薄倖の美少女......が、ここで物語は終わらない(ネタバレ注意)。
天才と狂人は紙一重なのか、ポールは、またもサマンサの遺体を盗もうと病院に忍び込む。ポールがサマンサの顔を見つめていると、突然彼女の両手がポールの首をガシッ! すると、みるみるサマンサの顔や腕の皮が剥がれていき、中から何かが現れてくる。機械だ! 現れたのは『タイガーマスク』の覆面ワールドリーグ戦に出場したゴールデンマスク(知らない人はゴメン。それしか表現しようがない)のような、口の中にギザギザした歯が並んだ黄色い金属フェイス。両目はBBだ。BBの声で「ポール、私ト一緒ニ来テ」。ポール「ノ~!」......ベキッ(首の折れる音)。
ちなみに、人と無機物の恋をテーマにした代表作に『マネキン』があるが、サマンサを演じたクリスティ・スワンソンはその後、1991年に『マネキン2』でマネキンに扮する。はたして『デッドリー・フレンド』でのキャリアが役に立ったのであろうか。