第18回 『猟奇!食人族 密林の変態儀式』
- 『猟奇!食人族 密林の変態儀式』
米題『JUNGLE VIRGIN FORCE』
1983年・インドネシア・94分
監督/ダヌ・ウンドゥ
脚本/アリフォン・C・ノアー
出演/リカディア・カンドー、ハリー・カプリ、ニナ・ロジャーほか
※DVD『猟奇!食人族 密林の女ターザン変態儀式』発売中
前回の『夜霧のジョギジョギモンスター』は、はっきり言ってクソつまらん作品だったけど、イスラム教圏の人が観れば、また違った感覚なのかな? でも、たった1本観ただけでは判断できないので、今回もインドネシア映画特集だ。っていうか、どっちもインドネシア映画の代表作じゃないけど!
1980年代のスプラッター映画ブームに含まれる形で、イタリアが生んだ『食人族』(81年)、『人喰族』(84年)などのカニバリズム映画も流行りを見せていた。そこでインドネシア映画界も、島の数は世界一という無尽蔵の天然ロケ地と、普通にいる有色人種役者を有効活用して便乗。だが、作品は疑問符だらけの怪作となってしまった。
インドネシア僻地にある謎の孤島。「アア~ア~」と叫び、木から木へと蔦にぶら下がって飛び移る、赤い毛皮のブラとミニスカを身にまとったターザン少女ジェリタ。そのルックスは、今ならジャカルタで大人気のJKT48でセンター狙えるほど可愛い。これまでジェリタは単独で生きてきたが、食人族の女達をワニから救った勇敢さが認められ、ジャガー横田似の女王がジェリタに王位を継承させようとする。だが側近の老呪術師が「その娘はヨソ者だ」と猛反対し、ジェリタを庇う女は掌からビビ~ッとビーム光線を発射して射殺! これをきっかけに、なぜかアニメ『マクロス』のように男女が真っ二つに分かれて大乱闘。ポンポコと打楽器のリズムで、「ホッホッ」「ウギャ~」と喚きながら戦う両軍。女王は若者に崖から突き落とされ、あっさり政権交代。その若者は、新しい王座に就いた呪術師から英雄の褒美を授かる。呪術師が「ん~」と力むと、若者の頭部からウルトラマンタロウのような角が生える(意味不明)。
そこへ都会からハイダル(主人公)、ジョン(宝物狙い)ら5人の学術調査隊が、「10年前に島の近海にセスナが墜落し、未だ娘が行方不明だ」と嘆くガイドのオッサンに引率されてやってくる。宝を狙う不良グループも後から到着。一行は食人族に襲われ、カンフーで抵抗するが(なぜか登場人物は全員、変なカンフーの使い手)、女子大生が首を切断され、ガイドも背中を槍で刺され重傷。不良グループの1人は王のビームで焼き殺され、いい具合に焼けた肉をゾンビのように千切ってバリバリ貪り食う食人族。
その後、もうお分かりのようにジェリタがガイドの娘だったことが判明し、だらだらした恋バナがあったりして、ついに女族の残党が新政権にリベンジの殴り込み! だが王の強力ビームの前には誰も歯が立たず、屍の山が築かれていく。食人族のウルトラマンタロウも颯爽と現れる......が、王のビームが謝って命中し死亡(泣)。するとそこへ、どっこい生きていた女王が再登場し王座奪回のタイマン開始。お互いガップリ四つに組み、ビビビと念力を出し合いガマン比べ。手に汗握る展開だ。
その頃、ドサクサに紛れて洞窟の奥で宝の山を発見したジョンは「豪邸で女を毎日抱いて暮らすぞ~」と狂喜するも、毒蛇の群れに襲われた挙句、火山爆発の落盤で宝ごと生き埋めに。さて、新旧王者同士のビビビは臨界点に達し、最後はスパークしてドカーンと両者大爆発! 死体の山の中で抱き合うハイダルとジェリタで完。何これ(笑)?
今回は『ジョギジョギモンスター』のようなイスラム教条的な描写は一切なかった反面、自国の原住民を人食い人種にしてしまった(汗)。人権とか大らかな時代だったんだなあ......。昭和のインドネシア映画は、まだまだ謎に包まれているのだ。