実母との絶縁、夫の余命宣告......写真家・植本一子が描く"家族"のリアル

家族最後の日
『家族最後の日』
植本 一子
太田出版
1,836円(税込)
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 今、注目の写真家・植本一子(うえもと・いちこ)さん。カメラマンとして2013年には下北沢で自然光を使う小さな撮影スタジオ「天然スタジオ」を立ち上げ、一般家庭の肖像を撮影する傍ら、最近では"書き手"としても注目を集めています。

 25歳年上の夫は、日本語ラップの先駆者でラッパーの「ECD(イーシーディー)」こと石田義則さん。現在でもミュージシャン・DJとして音楽活動を続け、『失点・イン・ザ・パーク』(太田出版刊)などの著作も持つ人物です。

 今回ご紹介するエッセイ『家族最後の日』(太田出版刊)は、そんな植本さんの最新作。3作目となる完全書き下ろしで、植本さんがテーマに据えたのは「家族」。

 これまでの作品『働けECD――わたしの育児混沌記』(ミュージック・マガジン刊)と、大反響となった前著『かなわない』(タバブックス刊)でも、夫の月収16万5000円から家賃11万円を捻出し、家計を支えながら2人の娘の育児に疲弊した毎日や、夫以外の男性と恋愛関係を持つ自分自身のことを包み隠さず作品にしてきた植本さん。

 本書では、確執があった実母との絶縁に始まり、夫の弟の自死、そして、夫に進行性の癌が見つかり、闘病生活が始まったことを中心に、家族の素顔がありのままに綴られていきます。

 植本さんの最大の理解者であり、植本さんが恋人の存在を打ち明けても受け止めてくれたという夫・石田さんとの独特な夫婦関係をはじめ、石田さんが余命宣告を受けた日のこと、家事や育児を担ってきた石田さんが入院したことにより、植本さんの肩に仕事と育児が一気に伸し掛かり、押し潰されそうになった日々のこと......。

 母親として、妻として、そして仕事を持つ1人の女性としての葛藤が克明に綴られている同書は、植本さん同様に、社会的な常識にとらわれた日々の暮らしに息苦しさを感じる人から、大きな共感を呼ぶ1冊となっています。

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