イギリスのアフタヌーンティー 最初に始めたのって誰?
- 『(082)紅茶の手帖 (ポプラ新書)』
- 磯淵 猛
- ポプラ社
- 864円(税込)
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1986年にキリンビバレッジから発売された"キリン 午後の紅茶"。今ではお馴染みの商品となった午後の紅茶ですが、そのパッケージに描かれたシンボルマークとなっている女性が誰なのかご存知でしょうか。
この女性、かつて実在した人物であり、商品名でもある"午後の紅茶"、つまりイギリスのお茶会として現在も受け継がれている、アフタヌーンティーの風習の創始者なのだといいます。
彼女の名は、7代目フランシス・ベッドフォード公爵夫人のアンナマリア・スタンホープ(1788〜1860)。1840年頃、ロンドンのバッキンガム宮殿の女官を退任し、北に100キロメートルほどいったベッドフォードシャーのウォーバンアビーという400年にわたって存続してきたベッドフォード公爵邸に入ったアンナマリア。彼女が午後の時間に紅茶を楽しむ光景から、アフタヌーンティーの風習は始まったのだといいます。
当時の貴族社会の食生活において、朝食はイングリッシュ・ブレックファーストと呼ばれるボリュームのあるものだったため、昼食はピクニックに出かけ少量のパンや干肉、チーズ、フルーツなどで済ませていたそう。
しかし、社交を兼ねた晩餐は、音楽会や観劇の後。19世紀に入ってからは次第に遅くなり、夕食開始時刻は20時過ぎに。そのため、アンナマリアは空腹を満たすため、午後の3時頃から5時頃の間に、サンドイッチや焼菓子を食べ、一緒に紅茶を楽しむように。さらに、彼女は自宅を訪れた客人たちにも、紅茶とフードを出してもてなすようになると、それが貴婦人たちの間で評判になり、やがて女性の午後の社交場として定着していったといいます。
それ以来、イギリスのアフタヌーンティーでは、サーモンやきゅうり、チェダーチーズなどのサンドイッチ、焼き菓子はスコーン、そのほかタルトやプチケーキ、ゼリー菓子、チョコレート類などがフードメニューの定番に。しかし、最近ではダイエット志向が高まり、乳脂肪の高いフード類は低カロリーのライトメニューに変わり、フルーツや野菜、ゼリー類を中心にしたティーフードが人気となっているそう。
また紅茶も、インドのダージリン、スリランカのウバ、中国のキーマン紅茶の三大銘茶をミルクと共に楽しむのが伝統的なペアリングでしたが、こちらも近年では、緑茶や中国茶、ハーブティー、フレーバーティーなどを提供するところも増えているそうです。
美味しいだけでなく、動脈硬化、高血圧や糖尿病、癌を予防し、老化防止、水虫退治、食中毒や肥満の防止、インフルエンザの予防といったさまざまな効用を持つ"紅茶"。書籍『紅茶の手帖』には、紅茶にまつわる歴史はもちろん、その効能や淹れ方、茶園の様子なども紹介されており、紅茶をより一層楽しむ手助けとなってくれるはずです。