道頓堀名物「かに看板」に込められた思いとは?
- 『広告20世紀 広告批評アーカイブ』
- グラフィック社
- 1,944円(税込)
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ネットで、街角で、電車やバスの中で、私たちは日々多くの広告に触れ、むしろ広告を目にしない生活を送る方が不可能となっているとも言えるのではないでしょうか。こうした広告には、いつの時代も人々の関心を惹きつけるために、様々な工夫がなされています。そして印象的な広告は、時代を超えて多くの人々の心を掴みます。
書籍『広告20世紀』には、20世紀を作った広告として、今でもどこかで目にしたことのある国内外の広告、その820点以上もの図版が解説と共に収録されています。
例えば1962年。この年、アメリカでは、マクドナルドを象徴する「M」のマークが初めて導入されたそうですが、日本では大阪名物ともなっている、かに道楽の「かに看板」がお目見えしたのだそうです。
「発案者でもある創業者の今津芳雄によれば、敗戦国ニッポンの意気を上げるために、日の丸よろしく白地に赤いかにを配した」(同書より)
現在3代目となる横8メートル、縦4メートルに及ぶ、この巨大なかには、道頓堀を訪れた観光客の絶好の写真スポットとして今も愛され続けています。
かに看板と共に大阪名物となっている巨大看板と言えば、グリコの看板を思い出す方も多いのではないでしょうか。こちらは現在、6代目を制作中とのことで、綾瀬はるかさんがゴールインのポーズをしている工事用シートがかけられていますが、このランナーのゴールインマークは、江崎グリコ創業者の江崎利一さんが家の近くの神社の境内で、駆けっこをする子供たちの両手を大きく上に上げ、元気よくゴールに駆けこんでいく姿を見かけたことによって生まれたのだそうです。
「スポーツは子供たちの遊びであり、健康への道でもある。そして、ゴールインはそのなによりの象徴である。『顔が恐い』との声で描き直されたこともあったが、極東オリンピックで優勝したカタロンを始め、谷三三五、金栗四三といった選手をモデルにしたグリコのランナーは、以来走り続けている」(同書より)
時系列で追っていくことで見えてくる、広告の変遷。広告に込められた思いをそのエピソードと共に改めて辿ることで、これからの広告のあり方もまた見えてくるかもしれません。