人気ニュースサイトの編集長が実践する脱力系SNS処世術

世界のエリートは大事にしないが、普通の人にはそこそこ役立つビジネス書
『世界のエリートは大事にしないが、普通の人にはそこそこ役立つビジネス書』
林 雄司
扶桑社
1,080円(税込)
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 約1ヶ月半前、富士通が子会社でインターネットプロバイダ大手のニフティの売却を検討しているというニュースが流れました。富士通側はそういった報道を否定していますが、そのニュースを聞いた一部ネットユーザーは、ニフティ内の人気サイト「デイリーポータルZ(以下、DPZ)」の今後について心配の声を上げています。

 DPZとは、ネタ系面白記事を配信するニフティ運営の超人気Webサイト。「バナナで釘を打って日曜大工」や「ゴールパフォーマンスだけやってみたい」など、とてもくだらない娯楽ネタをライター陣が真面目に検証することで知られています。ニフティが売却されたら、こうした"おもしろネタ"が提供されなくなるんじゃないかと心配しているファンがいるわけです。

 そんな熱いファンのいるDPZですが、同サイトのウェブマスターこと編集長の林雄司氏は自身の著書『世界のエリートは大事にしないが、普通の人にはそこそこ役立つビジネス書』の中で、サイトの運営スタンスについて興味深い話を披露しています。

 たとえばインターネットにおける処世術の大切さについて。林氏は自身のTwitterアカウントのフォロワー数は約2万9千人もいますが、Twitterには決して不満を書かないようにしているのだそうです。

「だって打ち合わせで会った人を『あの人Twitterやってるのかなー』と思って調べたとき、延々と職場について恨み言が書いてあったら怖いじゃないか」(本書より)

 一方で、どうしても腹が立つ場合はFacebookで「自分のみ公開」にして投稿する、という技を使用しているのだとか。自分のみ公開なら、もはや投稿しなきゃいいような気もしますが、こうやってTwitterとFacebookを巧みに使い分けてあるあたり、さすがウェブマスターといったところでしょうか。

 また、「炎上しにくいコツを知る」ことも重要。本書によると、思い切ったネタを頻繁に扱っているためデイリーポータルZの炎上を心配する声が上がっているそうです。ただ、同氏は炎上する原因について「何かに対してツッコミしておいて、それが間違っている場合だと思う。間違ってないにしても、調べ方が甘かったりとか」(本書より)と分析。同サイトでは担当ライターが好きなものを知ってもらうために書いている「だけ」なので、炎上はしにくいと語っています。

 さらに、サイトにコメント欄を付けていないことも炎上しない理由のひとつ。コメント欄は、サイトを見ている人達の一部しか書きこまないそう(林氏調べ)。「常連の座っているカウンター」のように、サイトの敷居を上げてしまう事を懸念し、同サイトにはコメント欄を付けなかったといいます。そもそもコメント欄がなくてもSNSで意見をダイレクトに伝えることができるようになっているので、その存在の必要性も薄れています。もっとも林氏は「たまにTwitterでメンションをもらうが、僕のTwitterは壊れているのでメンションが読めないということにしている」(本書より)と、Twitterでのコミュニケーションを一部断絶しているようですが......。

 そして、サイトに記事をアップしたら「書いたら良い評判しか見ない」こと。Facebookは知り合いばかりの世界であるため、たいてい褒めてくれるといいます。そういったコミュニケーションの中で、たまには気を落ち着かせることも大切のようです。

 サイト運営とは切っても切れない関係となった、SNSの存在。サイトとうまく連携したり、プライベートな事と仕事をはっきり分けたり。SNSとの上手い付き合い方を見つけるのも、人気サイトを運営するコツのひとつであるかもしれません。

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