恐ろしいほど当たるFacebookの「知り合いかも?」機能のひみつ

ビッグデータの衝撃――巨大なデータが戦略を決める
『ビッグデータの衝撃――巨大なデータが戦略を決める』
城田 真琴
東洋経済新報社
1,944円(税込)
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 Facebookに登録した際に、友達を探すために便利なのが「知り合いかも?」機能。自分の情報を登録すると知人を表示してくれるので、Facebook上にいる友人を検索する手間が省けます。

 しかし、この「知り合いかも?」機能は、仲の良い友達はもちろん、疎遠になった昔の友達や、会社の上司まで探し出してくれます。もはや「知り合いかも?」ではなくドンピシャ。あまりの正確さに「Facebookこわい...」と思った人も多いのではないでしょうか。

 SNSで最も重要なのは「人と人とのつながり」だと『ビッグデータの衝撃』の著者、野村総合研究所の城田真琴氏は言います。なぜなら、登録したところで誰も知り合いがいなければ、ユーザーはすぐに退会してしまうから。Facebookがユーザーの膨大なデータを瞬時に分析して「知り合いかも?」機能の精度を高めることを重要視するのは、「友人や知り合いを探すのに手間と時間がかかるのはSNS事業にとって大きなマイナスとなるから」と考えている裏返しでもあるのです。

 これと同じく「もしかして」機能のGoogleや「この商品を買った人はこんな商品も買っています」機能のAmazonも、ユーザーの膨大なデータ分析を活用して大きな利益をあげてきました。これらは「ビッグデータ」と呼ばれ、今年のIT企業の注目のキーワードです。

 もちろんIT企業だけでなく"ビッグデータ"を武器にする欧米の一般企業も増えてきています。しかし、「日本ではマクドナルドやグリーなど、ビッグデータを上手く活用できているのは少数の企業に限られている」と城田氏。

 それは、プライバシーの問題や、ビッグデータを扱うための専門の技術を持った人材が不足しているという問題もありますが、世界最大のカジノ運営会社、ハラーズ・エンターテインメントの会長・社長兼CEOのゲイリー・ラブマン氏は、企業が分析力を活かしきれていない理由を下記のように説明しています。

●「うちでは昔からこうしてきた」という常識が幅をきかせ、その正当化が検証されていない。

●経営陣がデータや事実の裏づけのない意識決定をしても、批判されない。

●分析のスキルを備え、データの山から宝を掘り出そうとする者がいない。何も思いつかないときにやるのが分析だとされている。

●「そのアイディアはよいか悪いか」よりもそれを言ったのは誰かが問題にされる。

 つまり、プライバシーともデータの量とも分析技術とも関係がなく、分析重視への転換を妨げるのは"企業でごく普通にみられる症状"の方が圧倒的なのだそうです。

 「次の10年で魅力的な仕事は統計の専門家」とは、グーグルのチーフエコノミストでカリフォルニア大学バークレー校教授のハル・バリアン氏の言葉。

 データを取り出す能力、データを理解する能力、データを処理する能力、データから価値を引き出す能力、データを視覚化する能力、データを人に伝える能力――。多種多様なデータがあふれるこれからの時代は「データを制するものがビジネスを制する」ということを『ビッグデータの衝撃』は教えてくれます。

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