メキシコ戦に挑むFW大津祐樹、小学生時代からの弱点は「小さな体」

僕らがサッカーボーイズだった頃 プロサッカー選手のジュニア時代
『僕らがサッカーボーイズだった頃 プロサッカー選手のジュニア時代』
元川悦子
カンゼン
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 ロンドン五輪のサッカー男子日本代表が、メダル獲得をかけて、いよいよメキシコ代表と対戦します。勝利すれば「銀」以上が確定。決勝進出ともなると、これまでの最高成績を塗り替えるだけではなく、世界中にサプライズを届けることができます。

 日本のスタイルは堅守速攻。これまで無失点と安定した守備陣を軸に、前線からの素早いチェイスでボールを奪取し、チャンスを作ります。開幕前に対戦したメキシコ戦では、この形で先制に成功。難敵メキシコから上げた勝利が、現在のスタイルに自信を与えることとなりました。

 しかし、この戦術に欠かすことのできないFW永井がエジプト戦で負傷。先発出場が危ぶまれています。そこで、注目されるのがFW大津祐樹。メキシコ戦でFW杉本のポストプレーから素晴らしいシュートを決めた大津は、スペイン戦・エジプト戦でもゴールを上げており調子は良好。また、「チャラ男」といったイメージの反面、試合後に涙を流し感情を爆発させる一面もあるなど、今、最も「ほっとけない選手」と言えます。

 大津の魅力といえば、身長180cmと大柄にも関わらず、スピードあるテクニカルなドリブルができること。フィジカルにも優れており、外国人選手と対等に勝負ができます。しかし、そんな大津の少年時代からの弱点といえば、実は「小さな体」だったのです。極端に小さかった体が、大津のサッカー人生を複雑にしました。

 小学校を卒業した時は147cm。クラスでは3.4番目の身長だったそうです。また、3月生まれだったため、体格的にハンディキャップがありました。そんな大津の弱点についてよく理解していた母は、容易に慰めたり、かばったりすることはなかったと、書籍『僕らがサッカーボーイズだった頃』で話しています。元アスリートの母・由美子さんは、そこで甘やかしたらスポーツ選手として壁を乗り越えられないことをよく知っていたのです。

 「祐樹のことはいつも近くで見ていましたから、体の小ささに悩んでいるのはわかっていました。でも、スポーツをやっていた経験から、何でも自分から解決しようとしないとダメなことを私は教えたかった。『成長が早い子にはかなわないんだから、頑張るしかないよね』と突き放すような言い方はよくしましたね。大きい子に蹴られて泣いて帰ったら『それはあんたが下手な証拠。蹴られる前に逃げればいいんだから』とちょっとキツく言って、考えさせるように仕向けたりもしたと思います」(母・由美子さん)

 また、大津選手が真面目にサッカーに取り組んでいない姿をみれば、スクール代(1回1500円)をお年玉で払いなさいと、正しい経済観念をもつために苦言を呈することもあったそうです。

 大津は、小学生時代にはアントラーズジュニアユースに入れず、中学時代にもユース昇格の道が閉ざされるなど、二度の大きな挫折を経験しています。しかし、母の教えもあり、挫折の度にピンチをチャンスに変え、人生を切り開いてきました。

 「ドイツでは周りがみんなデカいし、筋肉質だし、体つきも全然違うでしょ。自分もだいぶごつくなったけど、まだまだフィジカルじゃ通じない。そこで活きてくるのが、小さい頃からの経験なんです。俺の場合、もともと体が小さかったから、いつもデカい相手にどうやって戦うかを考えてきた。ぶつかって捻挫して......って繰り返してきたから、今は厳しい環境にさらされても全然問題ない。自分がどんどん逞しくなってるのを実感しますよ」(大津)

 様々な挫折を乗り越えてきた努力家・大津が、日本代表の歴史的快挙に貢献するか。キックオフが待ち遠しいです。

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