「何もかもが同じだということもなければ、決定的に違うということもない」注目のろうあ写真家が、世界をつなぐ一筋の細い線を紡ぐ

齋藤陽道
赤々舎
3150円(税込み)
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 第33回キヤノン写真新世紀優秀賞を受賞、いま注目を集める写真家の齋藤陽道さんは、生まれながらにして耳が聴こえないろう者。社会的にマイノリティとされる人たちを被写体に選ぶことが多い。

 「視聴や視覚、知的障害者を扱った写真集は今までもたくさん出ていましたが、カテゴリ分けされているのに違和感がありました。ただ、存在するものが一列に並んでいる世界を、まず自分自身が見てみたかった。何もかもが同じだということもなければ、決定的に違うということもないと思います」と話す齋藤さん。細い線をたぐっていくような構成を意識したという。

 写真集では、微妙な色味やトーンを紙面で再現するため、繊細な指示が必要となってくる。アートディレクションを担当した寄藤文平さんは「齋藤くん、編集者、印刷会社の担当者、複数の人たちと意識共有するのが、今回一番難しかった点だった」と話す。

 「1対1でなら筆談でやり取りできるんですが、複数の人が集まる場だとどうしても後手に回って細かい情報の把握ができないんです。例えほんの些細なことであっても、どうアイディアに結びつくかわからない。雑談や口ぐせといった、取るに足らない情報を知ることに対し憧れがあります」と齋藤さん。

 次回作の打ち合わせのために文平さんの事務所に集まった二人は、コミュニケーションの壁を減らすうため、コクヨが提供するiPad対応手書きノートアプリ「te.to.te」を導入してみることに。

 このアプリは、手書きのイラストや文字を複数の人で共有しながらノートを作り上げることができるドローイングコミュニケーションツール。画像も貼り付けられるので、写真集の構成案を練る時に最適だ。打ち合わせ中は、斎藤さんが貼り付けた写真を元に全体のコンセプトや構成、またトリミングなど細かい調整もこのアプリ上で共有。時には他愛もない雑談などもやり取りした。

 "たくさんの人の、普通の言葉"を拾うツールとして、このアプリに対しとても可能性を感じたという齋藤さん。「とくに文平さんの会話の末尾はとても色々なことが詰まっています。このアプリでもっともっと拾っていけたら」と話す。

【関連リンク】
te.to.te

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