自分よりも綺麗な親友のこと、あなたは好きになれる?

かわいそうだね?
『かわいそうだね?』
綿矢 りさ
文藝春秋
1,404円(税込)
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 「インストール」で第38回文藝賞を受賞しデビュー、「蹴りたい背中」では、第130回芥川賞を史上最年少・19歳で受賞した綿矢りささん。デビューから10年、今回、新作『かわいそうだね?』で表現するのは、愛しくて滑稽でブラックな"女子"の世界。

 収録された二編は、どちらも女性の本音をくすぐるもの。「恋や友情で"なんでうまくいかないんだろうな~"」ということに、綿矢さんなりの答えが見つかったといいます。

 『かわいそうだね?』の主人公・樹理恵は、百貨店勤務でしっかり者の28歳。同い年の彼氏・隆大と交際中。アメリカ育ちの隆大は、当時から7年間付き合っていた元彼女・アキヨと共に帰国したものの、樹理恵と出会い、新たな恋を選択。樹理恵と隆大は、順調な交際を送っていました。そんなある日、家賃が払えなくなったというアキヨが、就職活動期間中だけという約束で、隆大の家に住むことに。アキヨを受け入れることを樹理恵に切り出した隆大は、「好きなのは樹理恵」と言いますが、樹理恵の悩みは膨らむばかり......。

 いろんな人に優しく、煮え切らない男性の態度に振り回される女性。そんな男女関係に心当たりがある人は必見です。


 もう一遍は、『亜美ちゃんは美人』を収録。こちらは、さかきちゃんと亜美ちゃんの友情の裏側を描いたもの。さかきちゃんは、顔のパーツは地味ながら野性的な色気も備えたまあまあの美人さん。しかし、抜群の美人とはいかないレベル。そんなさかきちゃんのことを高校時代からの親友というのは亜美ちゃん。彼女は、嫉妬や陰口すらはねのけて誰もが夢中になるほど可愛く、居るだけで視線が集まる容姿に恵まれたうえ、性格も悪くないといった完璧な女性。大学、社会人、と年齢を重ねていくなかで、「自分より美人な親友」を見つめ続けたさかきちゃん。そんなさかきちゃんは心のなかでつぶやくのです。「亜美、たぶん私、あなたのこときらいだよ。」

 女性同士の友情は一筋縄ではいかないもの。美人の親友のこと、あなたは好きになれますか?


 表題作『かわいそうだね?』は、週刊文春連載時から話題を呼んだ作品。誰もが心に押しこめている本音がこぼれる瞬間をとらえた二編は、男女ともに楽しめるといえるでしょう。

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